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<憲法考―東北から>(上)9条と自衛隊/隊員の誇り 重み問う

国連平和維持活動から帰国した陸上自衛隊員を背景に、安倍首相(左)と、日報問題を公表する小野寺五典防衛相のコラージュ

 戦後日本の礎が、転換期を迎えている。3日で施行71年となる日本国憲法。安倍晋三首相は、9条への自衛隊明記を軸とする改憲に意欲を見せる。憲政史上初の国民投票も現実味を帯び始める中、東北の足元から改憲の論議を問い直す。
(報道部・馬場崇、小沢一成)

 自衛隊のイラク派遣日報問題が改憲に向かう1強政権を揺るがす中、東北の部隊の海外派遣は粛々と続いている。
 海上自衛隊第2航空群(八戸市)の隊員を中心とする約60人の部隊が4月19日、アフリカ東部ソマリア沖での海賊対処活動のため、拠点となるジブチ共和国へ出発した。活動期間は約3カ月。青森県内に住む30代女性は「無事に帰って来てほしい」と、自衛隊機に乗り込む夫に手を振った。

<「戦闘」に不安>
 防衛省は4月2日、2004〜06年の陸自のイラク派遣に関して「存在しない」としてきた日報が見つかったと発表。昨年3月に存在を確認したにもかかわらず当時の防衛相に報告せず、防衛幹部による組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)との批判が強まる。
 日報には宿営地周辺の情勢として「戦闘が拡大」との記述があったことも判明した。「活動は『非戦闘地域』に限る」との政府のこれまでの説明とは食い違う実態だった。
 「大事な任務に向かう夫を快く送り出したい」と思っていた女性。連日の報道を目にする中で、「『戦闘』に巻き込まれることはないのだろうか」との不安が頭をよぎるようになった。
 「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」。9条への自衛隊の存在明記は、安倍首相の強い意向に沿って自民党が今年3月にまとめた改正条文素案の柱だ。
 憲法9条に自衛隊の存在が明記されれば、自衛隊の任務と権限、活動範囲が際限なく広がり、隊員が危険にさらされるとの懸念は根強く残る。

<「信頼揺らぐ」>
 「隊員が誇りを持って活動できるようにしてほしい」。青森県自衛隊家族会長の対馬敦夫さん(78)=青森市=は自衛隊明記に賛意を示す。2人の息子が隊員、自身もOBだ。
 対馬さんが入隊したのは1958年。敗戦の残影がまだ色濃かった。初任地の陸自八戸駐屯地(八戸市)で正門に立つと、「税金ドロボー」と心ないやじを飛ばされたこともあった。
 「時代は変わった」と対馬さん。95年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災が大きな転機となった。捜索や救助に当たる隊員の懸命な姿に多くの国民が感謝の気持ちを抱いた。
 内閣府が3年に1度行う「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」。自衛隊の印象について、阪神淡路大震災後の97年は「良い」と思う人の割合が80.5%で、前回比3.7ポイント増加。東日本大震災後の12年は10.8ポイント増の91.7%に達した。
 現場の隊員が地道に積み重ねてきた国民からの信頼が、日報隠蔽問題によって失われてしまうのではないか。家族会として海外の紛争地域や被災地に赴く隊員を見送ってきた対馬さんはそう感じる。
 「何年かかっても良い。隊員の活動が国民に、世界の人たちに認められるよう、政治家はじっくりと憲法論議を重ねてほしい。政争の具になっては現場は報われない」


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2018年05月02日水曜日


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