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<漁師縁組 青森・佐井村>移住者たちの1年(中)地域の一体感楽しむ

「おこもり」で白米をかき込む家洞さん(中央)=2017年12月15日

 津軽海峡に面した過疎の村、青森県佐井村に漁師を志す若者がやって来て1年が過ぎた。後継者不足の特効薬と期待して村が始めた「漁師縁組事業」。地域で手ほどきを受けながら、一人前の漁師を目指す男たちそれぞれの悲喜こもごもの日々を追った。(むつ支局・勅使河原奨治)

◎昨年高校卒業 家洞昌太さん(19)=岐阜市出身=

 「めし」「めしーっ」「しる−っ」
 絶叫が社殿に響き渡る。地区の老若男女が神社に集まり、ご飯やすまし汁をひたすらかき込む。

<奇習にも参加>
 昨年12月に開かれた青森県佐井村の牛滝地区に伝わる奇習「おこもり」。大漁祈願や無病息災を願う祭りに、村の漁師縁組事業で移り住んだ家洞(やぼら)昌太さん(19)も参加した。
 最初は恥ずかしそうにしていた家洞さん。場の雰囲気に慣れると、飯粒を飛ばし、腹の底から叫んだ。「めしーっ」
 「とにかく楽しかった。この祭りがあるからこそ、地域の一体感があるのだと思う」
 岐阜市の進学高を卒業した昨年3月、村にやって来た。気持ちを固めたのは高校2年の終わりごろ。テレビで見た大間のマグロ漁師に憧れた。三者面談で担任の先生に水産系大学の選択肢も示されたが、すぐに漁師になりたかった。
 「何もそんなに遠くまで行かなくても」と母親に一度は反対された。東北の他地域や関東の漁師募集は「作業員」の色合いが強かった。将来的に漁協の組合員になれる村の漁師縁組の魅力が上回った。
 あどけない表情の残る未成年。自炊ができず、移住したての頃の主食はグミやチョコ、ポテトチップスなどお菓子ばかり。心配する家族から週に何度も電話があり「飯食ってるか」「体は大丈夫か」「友達できたか」「言葉分かるか」と質問攻めに遭った。

<「永住が目標」>
 それから1年がたち、両親は「一人前になるまで帰ってくるな」と応援してくれるようになった。
 最初の半年は佐井地区でヒジキ採りやウニ漁、マグロはえ縄漁などさまざまな漁を経験した。後半は牛滝地区に移り、大人数で大型の網を使うタラやサケ漁を学んだ。タラが腹ばいで浮いてきて網の中が真っ白になり、たも網で何度すくい上げても収まりきらない大漁も経験した。
 牛滝地区で指導する佐井村漁協の坂井幸人組合長は「網作りや修理もできるようになった。素直なところもいい」と評価する。
 漁に出ればまだ怒られてばかりだが「毎日が楽しい。充実している。永住できるよう頑張る」と意気込む家洞さん。船酔いに悩まされた頃とは別人のようにたくましさを増している。


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2018年05月04日金曜日


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