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<問う論じる 改憲の行方>(中)労働問題、生存権考慮を

今野晴貴(こんの・はるき)1983年、仙台市出身。中央大法学部在学中の2006年、大学生や若手社会人を中心にPOSSEを設立。若者からの労働相談を中心に活動する。10年に仙台支部を開設した。著書に「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」など。

 安倍政権で不祥事が相次ぎ、憲法改正論議は深まっていない。自民党が示した改憲4項目の他にもテーマは多岐にわたる。東京電力福島第1原発事故の避難者支援、若者の労働問題や政治参加に取り組む団体の代表者に憲法を巡る課題を聞いた。

◎NPO法人POSSE代表 今野晴貴さん(34)

<理念の反映遠い>
 −若者の労働問題に関わる立場から、現在の憲法をどう捉えるか。
 「労働権や労働者の福祉は十分に包含されている。特に改正の必要があるとは思っていない。問題は憲法の理念が社会に十分反映されていないことだ。違法労働の取り締まりはいまだ不十分な状態が続く。理念と現実があまりにも懸け離れている。労働問題に限らず、あらゆる社会問題に共通する普遍的な課題だ」
 「勤労の義務を定めた27条は労働基準法、労働者の団体交渉権を規定する28条は労働組合法の根拠になっている。この二つとともに、生存権を保障する25条をセットで考える必要がある。25条が目指す社会が現実になっていれば、ブラック企業や長時間労働、過労死などの問題は解消されると思う」

 −自民党が示した改憲4項目に教育の充実が盛り込まれた。
 「若者や子育て世代の多くが共感するだろうが、憲法に盛り込む必要があるのか。わざわざ遠回りする方法を選んでいるようにも見える。憲法改正よりハードルの低い立法措置で早急に対応する方がいい」

<人権の抑圧 危惧>
 −4項目の中には緊急事態条項の規定もある。
 「人権の抑圧につながるのではないかと非常に危惧している。労働の現場に例えれば、会社の経営が危機的で倒産寸前になったため、利益を上げるために手段を選ばず社員を働かせるようなものだ。緊急事態を大義名分に、人権を無視する発想がまかり通る社会になりかねない」
 「そもそも何が緊急事態なのか、時の権力者によって恣意(しい)的に解釈される恐れがある。適切に運用されるとは到底思えない。大義名分の下、切り捨てられる人が出てくるかもしれない。どうしても憲法に盛り込むなら、絶対に人権は制限しないとの条文を加えるべきだ。憲法は国家権力を縛るもの、という基本的な考えが欠如している。このままでは逆の方向に進む」

<課題の対処が先>
 −改憲を巡る議論の在り方をどう見るか。
 「本質的な議論になっていないのではないか。9条に関する論じ方が典型的だ。重要な点は自衛隊の存在を明記するかどうかではない。自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)に関連して指摘されているシビリアンコントロール(文民統制)の課題にどう対処するのかというのが先だ。改憲を前提に議論するのではなく、現実に起きていることこそどうにかしなければならない」

 −憲法の理念と現実を近づけるために必要なことは。
 「12条に『国民の不断の努力』という記述がある。理念をどう実現していくのか、あらゆる立場の人が考えることが必要。現在の憲法に書いてあることさえ実現されていない状況で、改憲にエネルギーを注ぐ理由があるとは思えない」
(聞き手は東京支社・山形聡子)


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2018年05月05日土曜日


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