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<週刊せんだい>書店事情2018(1)駅前は今/3店分野ですみ分ける

(左)多くの書籍が目に付くように高さ約2メートルの書架を設置している丸善仙台アエル店
(右)女性客のニーズがある書籍をまとめて置いているくまざわ書店エスパル仙台店

 週刊せんだいの5月のテーマは「書店事情2018」です。仙台市中心部では東日本大震災後、大型書店が相次ぎ閉店しました。本離れ、インターネット通販や電子書籍の普及…。苦戦を強いられる街の書店も、手をこまねいているだけではありません。活路を見いだそうとする取り組みや、古書店に生じている変化など、書店の現状を紹介します。
 本に関わる仕事をしている人、本を愛する人が書店でどのように、何に着目して本を選ぶのかを語るインタビューも掲載します。



 「長引く出版不況で書店の未来は八方ふさがりだ」。仙台市の金港堂社長で宮城県書店商業組合の藤原直理事長(67)は、こう吐露する。

<読書離れ深刻>
 年々増していく読書離れを根本に、ネットの通販やコンビニの台頭、電子書籍の普及などで書店は苦境に立たされている。同組合によると、仙台市内の加盟店舗数は1992年の171店をピークに減少の一途で、4月末現在で38店となっている。
 出版科学研究所(東京)の調べによると、2017年の紙の書籍と雑誌の販売額は、全国で約1兆3701億円。前年比6.9%減で13年連続の減少だ。
 藤原理事長は「スマートフォンなどの普及で紙の本にお金を出さなくなった上、読む時間も減っている」と顔を曇らせる。

<高い書架設置>
 仙台市内の書店も改装や品ぞろえに知恵を絞り、窮地を打破しようと懸命だ。その象徴的な場所が、大型店が集中するJR仙台駅西口付近だ。
 丸善仙台アエル店は、17年10月に大幅に改装した。(1)より多くの書籍が目に付くように高い書架を設置(2)児童書の売り場を客の出入りの多い入り口付近に移動(3)漫画本の売り場面積の倍増−を柱に据えた。中崎悠人店長(38)は「書店としての総合力で勝負する。売り上げは何とか現状維持できているが、安心できる状況ではない」と厳しい表情で話す。
 「学都の書店として専門書の手厚さで勝負している。約30万冊の書籍のうち専門書が半分近くを占めている」。こう語るのは、ジュンク堂書店仙台TR店の石原聖店長(42)だ。医学の専門書と漫画本は姉妹店の丸善仙台アエル店が扱い、両店が品ぞろえを補い合っている。

<女性向け充実>
 くまざわ書店エスパル仙台店(金子圭太店長)は、ファッションビル内という地の利を生かし、女性向けの美容や健康、料理などの書籍を店の入り口付近にまとめて置いている。50代の専門学校の女性講師は「女性に親切な品ぞろえと棚作りなので、仕事帰りによく足を運ぶ。思いもよらないすてきな本と出合える」と笑顔を見せる。
 JR仙台駅前の書店事情は、16年前に大型店の進出などで「仙台駅前書店戦争」と称された。東日本大震災後に店の変遷があったが、今も激戦区であることに変わりはない。本が売れない時代に3店の店長は深刻な危機感を抱いている。「うまくすみ分けて、書店業界全体を活気づけないといけない」と口をそろえる。



 出版不況の中、活路を見いだそうとしている仙台市内の書店関係者の取り組みを紹介する。

◎本屋さん私の歩き方/作家・伊坂幸太郎さん 思わぬ出合いが魅力

 仙台市在住の人気作家や編集者、読書家に書店での思い出や楽しみ方などを聞いた。

 書店は僕の生活になくてはならない存在です。自分の本を置いてくれていることはもちろんですが、純粋に本を買う意味でもすごく大事です。最近はネットで本を買うことも増えてはいますが、ネットで買ってみたら、意外に期待していた内容ではなかったり、必要な情報が載っていなかったりすることがあるんですよね。
 その点、書店で本を手に取れば内容は確認できます。僕は文庫本を買う時には、解説文を読んでから買うかどうかを決めることも多いんです。お目当ての作家の隣にあった別の作家の本を何げなく買ってみたら、すごく面白かった経験もあり、思わぬ出合いみたいなものが、リアル書店の魅力なんでしょうね。
 仙台市内の書店を巡って感じていることは、品ぞろえが豊富で便利だということです。気になる本は探せば大概は見つかります。ただ、市中心部のなじみの路面店の閉店が残念です。
 僕は小説家なので活字の本ばかり読んでいると思われがちですが、漫画も大好きなんですよ。小説以上に漫画はお店によって推している本が違っている気がします。JR仙台駅近くの喜久屋書店仙台店は品ぞろえが豊富です。駅ビル2階のブックエキスプレス仙台北口店も独特な漫画をたくさん並べています。
 バスケットボールを題材にした傑作の少年漫画「あひるの空」(日向武史)も、ブックエキスプレス仙台店でたまたま見つけたことで気に入って全部そろえたんですよ。
 僕は新刊本を出すと、仙台の書店にサイン本を置いてもらいます。仙台市内の書店用に1000冊、仙台以外に100冊ぐらいなので偏りがすごいんですけど。仙台の書店は僕を15年前から変わらずに応援してくれていて、本当にありがたいです。

[いさか・こうたろう]1971年千葉県松戸市生まれ。東北大法学部卒。「アヒルと鴨のコインロッカー」で吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で日本推理作家協会賞短編部門、「ゴールデンスランバー」で山本周五郎賞と本屋大賞を受賞。46歳。仙台市青葉区在住。


関連ページ: 宮城 社会

2018年05月10日木曜日


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