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<大川小訴訟>安全確保義務 上告審議の焦点に

 東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった宮城県石巻市大川小の児童23人の19遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、市と県は10日、事前防災の不備を認め約14億3610万円の賠償を命じた仙台高裁判決を不服として上告した。上告審では高裁判決が学校と市教委に高度な「安全確保義務」を課した学校保健安全法の解釈や、津波が予見できたとした判断枠組みの妥当性が焦点となる。
 高裁は同法を「児童の安全確保は公教育制度の前提で、根源的な義務を明記したもの」と解釈。「平均より高いレベル」で学校の実情に関する情報を独自に収集蓄積した危機管理マニュアル整備を求めるなど、規範性に基づく安全確保義務を初めて定義した。
 市・県はこうした法令解釈を上告理由の一つとする方針。一審仙台地裁判決は「同法の規定は抽象的で努力義務にとどまる」との市・県側の主張を大筋で採用し、「具体的な(対策)内容の規範が示されたものではない」と判示。高裁と判断が分かれた。
 津波の予見に関しては、高裁判決の判例違反と経験則違反を主張する見通し。高裁は校舎が北上川堤防と近接する実情などから「堤防が損壊して津波浸水する危険を予見できた」とし、津波ハザードマップの信頼性を検証しなかった学校と市教委の組織的な過失を認定。マップで予見可能性を判断した過去の津波訴訟と異なる枠組みを示した。
 市代理人の松坂英明弁護士は「目の前の北上川堤防が損壊する可能性の立証は不十分。高度な安全確保義務を前提にしても無理筋な判断枠組みだ」と話す。
 亀山紘市長は8日の市議会臨時会に上告提起の関連2議案を提出し、賛成多数で可決された。村井嘉浩知事は10日、上告方針を専決処分した。県議会6月定例会に専決処分の承認を求める議案を提出する見通し。
 原告団長の今野浩行さん(56)は「高裁が示した『子どもの命を守る判決』が後戻りしないよう、最高裁の判断に期待するしかない」と話した。
 大川小では児童74人と教職員10人が津波で死亡・行方不明となった。2016年10月の仙台地裁判決は市・県に約14億2660万円の支払いを命じ、遺族と市・県の双方が控訴した。


2018年05月11日金曜日


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