岩手のニュース

<あなたに伝えたい>今も友達が家に 元気もらう

遺品の手帳をいとおしそうに見詰める人志さん(右)と吉子さん

◎小笠原人志さん、吉子さん(岩手県釜石市)から裕香さんへ

 人志さん 震災2日前の夜、寝ていた私に裕香が「帰ったよ」と声を掛けてきたんです。珍しいなと思っていると、「何でもないけどさ」と笑って自室に消えました。バスの運転手で出勤が早い私とは、それが最後の会話になりました。
 就職する裕香に「公務員は自分より住民の命を守らなければいけないんだぞ」と諭したことがあります。心構えのつもりが現実になってしまいました。
 長距離バスに乗るときは、必ず飲み物を買って運転手さんに手渡していたそうです。「お父さんの同僚だから大事にしなきゃ」って。PTA会長だった私のあいさつ文を考えてくれたこともあります。めんこくて、優しい子でした。
 吉子さん 高齢者福祉を担当していた裕香は、夜遅くまで一生懸命働いていました。責任感があり、職場でもかわいがってもらっていたと聞きました。
 送り迎えの車内では毎日、2人でおしゃべりしました。冗談で結婚の話題を振っても「私は実家が好き。ここの環境が一番です」とにこにこしていました。
 旧役場庁舎は裕香が生きた証しであり、心のよりどころです。4歳の孫に建物が壊れている理由を聞かれ、裕香が働いていたことと一緒に津波の怖さを教えました。震災を後世に伝え、悲しみを繰り返さないためにも残してほしいです。
 裕香、私の子に生まれてくれてありがとう。今も友達が家を訪ねてくるよ。大切にされていたのが伝わり、元気をもらっています。

◎優しくて責任感のあった娘

 小笠原裕香(ゆか)さん=当時(26)= 釜石市鵜住居町で父人志さん(65)、母吉子さん(66)、兄尊史さん(40)と暮らし、岩手県大槌町役場に勤めていた。地震発生で研修先から職場へ戻る途中、車から降りて高齢者の避難を手伝おうとして津波にのまれた。


2018年05月13日日曜日


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