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<大崎耕土 どうつなぐ>世界遺産認定(上)残せるか「居久根」 維持負担重く伐採も

スギなどが伐採され、居久根がなくなった民家=宮城県色麻町王城寺

 後世に伝えるべき景観や農業システムを有するとして、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に選ばれた宮城県大崎地方の水田農業地帯「大崎耕土」に4月、認定証が授与された。遺産価値を高める行動計画が動き始める中、遺産の保存と活用の課題を探った。
(大崎総局・大場隆由、小牛田支局・山並太郎、加美支局・佐藤理史)

<「使い道ない」>
 大崎耕土は大崎市と美里、涌谷、加美、色麻の4町にまたがる。1市4町などでつくる大崎地域世界農業遺産推進協議会によると、域内の屋敷林「居久根(いぐね)」の数は約2万4300で、世帯数の4割に当たる。
 遺産の認定名称は「持続可能な水田農業を支える『大崎耕土』の伝統的水管理システム」と水管理が前面に出る。ただ、認定に当たっては水田の生物多様性に貢献する居久根が数多く残る景観が大きな役割を果たした。その居久根が消滅の危機にひんしている。
 色麻町王城寺弘台堂の片倉幹子さん(79)方では昨年夏までに、100本近くあったスギを伐採した。費用は約45万円。「家に当たる風は強くなったが不便は感じない」と片倉さん。防風ネットを張るつもりだ。
 風よけのスギは、かつて家の建築資材になった。葉はたき付けに利用されたが、今は使い道がない。雑木や雑草が生い茂る居久根の管理は、高齢の身に大きな負担だった。

<大木倒れ被害>
 大崎耕土の居久根のスギの多くが、樹齢50年の伐採適期に達している。建材として切り出される一方で、資金難で手を付けられずに倒木するものもある。
 片倉さんの近くの民家では、3月に強風で居久根の大木が倒れ、作業場のほか母屋の一部も壊れた。
 家主(58)は「切った方がいいのかもしれないが、簡単にはいかない。『農業遺産だ』『景観が美しい』と言われても維持には労力もお金もかかる」と悩む。
 域内の農家は、少子高齢化で減り続ける。新規就農者が多い大崎市でも、農家数は5981戸(2015年)と、10年間で3分の2に減った。後継者のいない農家からは「居久根ごと家を引き取ってもらえないものか」との声も漏れる。

<支援制度なく>
 推進協の賛助会員で、居久根の研究を続けるNPO法人田んぼ(大崎市)の岩渕成紀理事長(61)は「このままでは10年もすれば居久根はなくなってしまう。関係者が知恵を出し合い、守っていく新しい仕組みが必要だ」と警鐘を鳴らす。
 現在、居久根維持のための条例や支援制度はない。推進協は、国の「多面的機能支払交付金」を活用した集落単位での居久根管理が進められないか模索する。
 岩渕理事長はファンドやクラウドファンディングなどの活用を提唱。居久根の手入れや苗木の提供を企業に協賛してもらったり、居久根付き空き家への移住助成制度を作ってもらったりできないかと思いを巡らせている。

<大崎耕土の居久根>スギを中心にカキ、クリなど200種を超える草木があるものもある。暴風や浸水を防ぐほか、実のなる木や薬草が植えられ、食糧確保の役割もあった。大崎市の調査では稲作の害虫の天敵となるカエルやトンボ、クモといった生物の生息域になっていることが分かり、大崎地域世界農業遺産推進協議会が「水田地帯の生物多様性に貢献している」とアピールしたことが遺産認定審査でも評価された。


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2018年05月14日月曜日


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