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<減反廃止>「農薬増える」秋田・八郎湖の水質悪化懸念 環境保全型栽培に活路

学生と水質調査に当たる近藤准教授(中央)。後ろには代かき後の水田が広がる=秋田県大潟村
農地を囲うように広がる八郎湖。農業排水により水質悪化が続いている(大潟村提供)

 コメの生産調整(減反)廃止を受け、慢性化している秋田県の八郎湖の水質汚染が、改善を図れるか否かの分岐点を迎えている。湖に囲まれた大潟村の稲作に伴う農業排水が汚染の主因の一つだが、今後の増産による進行が懸念されるためだ。湖と農業の共生に向け、環境保全型の栽培手法などに活路を見いだそうという動きも進んでいる。(秋田総局・鈴木俊平)

<流入年300トン超>
 面積約4700ヘクタールの八郎湖には、肥料などに含まれる窒素やリン酸を含んだ水が年間300トン以上流れ込む。水中の酸素が不足し、夏場は植物プランクトンのアオコが繁殖して水質悪化を招く。長年さまざまな対策が検討されてきたものの、改善の見通しは立たない。
 減反廃止を受け、大潟村は今年、前年比948トン増の2万9775トンのコメ生産を見込む。定期的に湖を水質調査している秋田県立大の近藤正准教授(農業水利学)は「農薬量が増え、環境汚染が進む可能性は高い」と予測する。

<排水なし挑戦>
 環境へのダメージを軽減しようと、新たな栽培方法の模索が続く。
 同大や農研機構東北農業研究センター(盛岡市)などは、汚染の一因だった代かき水に着目。昨年5月、村内の50ヘクタールで排水を必要としない「無落水水田」に挑戦した。自動運転機能を備えた田植え機も投入し、作業軽減との両立も図った。
 村内全ての水田で水深を2.5センチ減らせば、汚染が集中する5月の窒素、リン酸をそれぞれ約2割削減できるとの試算結果が得られた。
 同センターの長坂善禎作業技術グループ長は「農作業の負担削減になる上、コメの品質や収穫量に変化はない。大きな一歩だ」と評価する。今年は約20の農家が最大300ヘクタールで実践を予定するなど、成果を積み重ねて普及を図る考えだ。
 八郎湖では1987年9月の台風時に湖内へ海水が流入し、ヤマトシジミが繁殖して水質が改善したことがあった。
 この経験を踏まえ、防潮水門の開放による水質、生態系の復活を期待する声は根強い。だが、秋田県は規定する運用指針に従い、「海水を八郎湖へ流水させない」などとして開門に否定的な立場を崩さない。
 近藤准教授は「かんがい期後に水門開放すれば、塩水による稲作への影響を回避できる。繁殖したシジミを活用した産業振興にもつながる」と再考を促す。

<3月に研究会>
 大潟村内外では長年、八郎湖に流れ込む川の上流部での植生など、水質改善を目指す住民主体の活動が続けられていた。近年は問題の風化や高齢化などで活動は縮小傾向にある。 こうした状況を踏まえ、八郎潟の元住民や研究者らは3月、有志団体「八郎潟・八郎湖学研究会」を設立。一般市民向けの現地セミナーや漁業研究を通じて課題を発信し、解決策を探ろうとしている。
 県立大の谷口吉光教授(環境社会学)は「減反廃止は大きな転機になりうる」と強調。「水質改善を実現して初めて八郎潟の干拓事業は成功したと言える。持続可能な農業の在り方を問い直し、住民や行政が連携した取り組みがより一層求められている」と話す。


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2018年05月14日月曜日


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