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<大崎耕土 どうつなぐ>世界遺産認定(下)問われるブランド力 地場産発信の好機に

米どころの大崎耕土。土産店には、環境共生型をはじめとした地場産米が並ぶ=大崎市古川の市観光物産センターDozo

<32商品にロゴ>
 国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産認定地域は大崎市と美里、涌谷、加美、色麻の4町にまたがる「大崎耕土」の水田農業地帯を含め、国内で11地域になった。先行地域では遺産活用の一環として、農家民泊といったグリーンツーリズムの推進とともに、域内の生産物のブランド力を高める取り組みが進む。
 国内で2011年6月に初認定された石川県の「能登の里山里海」は、輪島市など4市5町での棚田農法や海女漁といった伝統的農林漁法の継承が評価された。県などでつくる遺産活用実行委員会は、遺産の趣旨に沿った産品を「能登の一品」として認定し、遺産のロゴマークを貼って販売できるようにした。
 認定商品は棚田生産のコメのほか、大豆や塩など32品。石川県によると、遺産認定前後の比較で商品の売上高の伸びは平均約25%。認定が追い風になっているようだ。

<作付け6割に>
 大崎地域も好機に期待を寄せる。みどりの農協(美里町)の大坪輝夫組合長は「遺産認定は大きな商機」とする一方、「ロゴマークを貼っただけですぐに価値が上がるわけではない」と自助努力の必要性を説く。
 米どころの管内では、希少な淡水魚シナイモツゴがすむため池の水を使った減農薬・減化学肥料栽培の「シナイモツゴの郷の米」や、冬期湛水による野鳥のふんを肥料に農薬や化学肥料を使わない「ふゆみずたんぼ米」といった遺産の趣旨を体現した「環境共生型」高付加価値米の生産に農家が独自に取り組む。ただ、生産量はごく限られる。
 農協は農薬を抑えた環境保全米の作付け割合を、現行の4割から6割に引き上げる目標を掲げる。その上で大坪組合長は、コメ余りの現状を踏まえ「安全と安心をキーワードに、大豆や園芸作物のブランド化に注力する必要がある」とコメ以外も重視する。

<ファンド創設>
 能登地域の遺産認定と同時期に、石川県は金融機関と「いしかわ里山振興ファンド」(120億円)を創設した。「なりわい創出が過疎化が進む集落の維持につながる」を理念に毎年度、運用益約7600万円を原資に産品開発などの小口の取り組みを支援する。
 これまでの助成実績は、全県で146件(うち能登地域で97件)に上る。耕作放棄地でのソバ栽培や高級レストラン向けの伝統野菜の増産、炭焼きの復活といった小さな地域ブランドの芽が出ている。
 能登地域には認定以降、新規営農団体への支援制度と遺産ブランドへの期待が相まってか27の農業生産法人が参入し、300ヘクタールの農地が新たに活用されたという。
 産品認定制度の導入を検討する大崎地域の取り組みは、緒についたばかり。大崎市産業経済部の平山周作部長は「2、3年で風化せず、地域や生産品の価値が崩れない仕組みづくりが重要だ」と強調する。

[産品認定制度「能登の一品」]能登地域で生産されるか、能登地域の原材料を使った食品が対象で、農業遺産にふさわしいかどうか認定審査を受ける。漁業地域が認定地域に含まれるため、天然ブリや塩蔵ワカメなどの海産物もある。商品に貼るロゴマークは農業遺産と共通だが、「未来につなげる能登の一品」などと文字を入れ差別化している。登録料などはなく、有効期間3年で延長が可能。


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2018年05月15日火曜日


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