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<むつ市長選>医師不足、住民に負担 病院の赤字体質、財政を直撃

午前8時半に始まる診察のため、開院前から入り口に並ぶ市民ら=17日午前6時50分ごろ、むつ総合病院

 任期満了に伴う青森県むつ市長選(6月3日投開票)が27日、告示される。現時点で現職1期目の宮下宗一郎氏(39)以外に立候補の動きはなく、無投票の公算は大きい。東北最北端の下北地方で、市政への住民の切実な声に耳を傾けた。(むつ支局・勅使河原奨治)

 下北地方の5市町村でつくるむつ総合病院は市内で唯一、朝からの順番待ちが必要な施設だ。民間病院が少ない下北の患者が夜明けとともに行列をつくる。

<長い待ち時間>
 「朝6時に家を出て、受け付けは77番目だった。今日は早く終わった方」。正午過ぎに病院で診療を終えたむつ市大畑町の漁業女性(81)が話す。
 自動ドアが動きだす午前7時前に毎日行列ができる。受け付け開始は同7時半、診療は同8時半からだ。
 漁業女性は前回、同じ時間に来て、血液や心電図検査、問診を終え会計を済ませると午後3時を過ぎた。
 「病院に来て、途中でお昼ご飯も食べなければならなかった。へとへとだよ」
 待ち時間の長さ解消が市民の最大の関心事だ。運営する下北医療センターによると、3月の全体の平均待ち時間は2時間53分。最も長い眼科は4時間49分に及ぶ。複数の科を受診すると、さらに時間は延びる。
 「最大の原因は医師不足」。同センターの柳谷孝志事務局長が説明する。
 同病院の常勤医は41人で、必要数61人に20人足りない。下北地方で唯一の総合病院だが、救命救急医がいないため、救急車が来る度に一般の診察に影響する。
 全23科のうち9科で、青森市や弘前市からの非常勤医に頼る。緊急救命処置が求められる心臓血管外科は2012年4月から、脳神経外科は17年4月から常勤医がいない。
 常勤医不在は、市財政にも響く。常勤を前提にした過去の設備投資や不採算医療の負債が市の負担へ変わる。稼ぎどころの手術や入院治療は、非常勤医には不向きで慢性的な赤字体質が続き、市の債務負担残高は17年度末で27億8500万円に上る。
 高速道路網の弱さが、医師不足の悩みを増幅させる。大病院のある青森市や弘前市、八戸市へは救急車でも数時間かかる。
 国の事業化に基づき県が整備する全長約68キロの下北半島縦貫道(七戸町−むつ市)の完成部分は25.3キロ。未着手区間の整備は「いつになるか分からない」(県道路課)状態だ。
 ドクターヘリは、吹雪や強風の悪天候時と夜間は飛べない。道路インフラ整備が患者の命を左右する。

<着工から24年>
 住民が「命の道」と早期完成を期待する縦貫道は、原子力施設が集中する下北半島で避難道の側面も持つ。だが着工から24年たっても完成時期すら見通せない事実が、地域の置かれた厳しさを物語る。
 秋にはむつ市に使用済み核燃料中間貯蔵施設が完成予定だ。保管期間は最長50年間。宮下宗一郎市長は「50年のうちに産業構造を転換することが使命。それまでに自分たちで稼げるようにしないと、いつまでたっても(原子力事業を)引き受けることになる」と危機感を募らせる。
 下北半島の5市町村をリードするむつ市の次期市政運営に課される責任は、重く厳しい。


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2018年05月22日火曜日


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