岩手のニュース

<あなたに伝えたい>地元で美容室 夢かなえたい

古里に戻って美容室を開く夢を胸に、修業のため東京での生活を送る英さん=4月20日、東京都新宿区

◎伊藤英さん(岩手県陸前高田市)から涼子さんへ

 英さん 「行ってらっしゃい」。あの日の朝、いつものように仕事に出る母を、ベッドに寝たまま声だけで見送ったのを今も思い出します。いつもそばにいるのが当たり前で、甘えて迷惑ばかり掛けていました。もっと親孝行ができれば良かったと、後悔が募ります。 私は勤務する大船渡市の美容室で被災しました。高台に避難して難を逃れましたが、自宅は流されました。母の姿はどこにもありませんでした。昼は避難所で救援物資の仕分け、夜は盗難を阻止するための夜回りをしながら、合間を縫って母を捜しました。
 警察によると、自宅から遠く離れた所で発見されたそうです。捜し続けていたある日の夜、海側から見た町の景色が頭に浮かびました。母が見つかった場所に似ており、呼んでくれたのかもしれません。
 一時、美容師を辞め、幼なじみが設立した復興支援団体「SAVE TAKATA」に参加し、農業の6次化や若者の雇用確保などに取り組みました。自らの再起と美容師としての独立を目指し、3年前に修業で東京に出ました。今は支店長を任されています。
 古里を離れた東京暮らしで、亡き母や家族、友人の存在や、前の職場で教わったことが支えになっていると実感しています。
 いずれ陸前高田に戻り、自宅と美容室を建てたいです。一人でも多くのお客さんを笑顔にして、いつの日か土産話を母さんに伝えたいと思っています。

◎甘えて迷惑ばかり掛けた母

 伊藤涼子さん=当時(57)= 東日本大震災の津波で、陸前高田市の職場から帰宅する途中に流されたとみられる。震災から半年余り、行方不明だった。次男の英(さとる)さん(36)が2011年9月末、岩手県警から白骨化した遺体発見の連絡を受けた。県警のDNA鑑定で身元が判明した。


2018年05月27日日曜日


先頭に戻る