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<東北の本棚>朝鮮出兵、列強への対抗 

◎戦国日本と大航海時代 平川新 著

 大航海時代、スペインとポルトガルはキリスト教布教と交易をセットに世界征服事業を展開した。列強がアジアに進出する中、豊臣秀吉はなぜ朝鮮出兵したのか、徳川家康はなぜ鎖国に転じたのか、キリスト教禁令下で、伊達政宗はなぜ慶長遣欧使節を派遣できたのか。日本史と世界史の史料を突き合わせ、全く新しい視点からこれらの問題にアプローチする。
 朝鮮半島に30万人の兵力を投入して明までかき取ろうとした秀吉。従来は「狂気の沙汰」と評されたが、著者はここで「日本と朝鮮、明との関係だけで考えるべきではない」と言う。スペインとポルトガルは地球を東西半分に分け、領土を分割する条約を結んでいた。秀吉はその情報を入手しており、先手を打って明を征服、さらに「天竺(てんじく)を取るべし」とポルトガル領インド出兵を構想していた。いわば東洋からの反抗、挑戦だ。
 朝鮮出兵は結果的に失敗。日朝双方の人々を苦しめたのは事実だが、統一政権をつくって軍事大国になった日本の力を世界に示す出来事だった。幕末まで列強による植民地支配を許さなかったのはこのことによる、と解釈する。
 秀吉政権を継いだ家康は初め全方位外交で臨んだ。しかし布教と征服をセットで持ち込もうとした列強に反発、キリスト教を禁教とした。しかし禁教令は出たが、諸藩一斉に、徹底して行われたわけではない。政宗はこの間隙を突いた。「伊達領内に限りキリスト教の布教を認めるという約束を、家康と交わしていたのではないか」というのが著者の説である。そうすれば仙台藩でのキリスト布教と欧州との交易が、両立できる。史料を丹念に追い、大胆な仮説を提起。歴史の謎解きの面白さを読者に味わわせてくれる、近年にない力作だ。
 著者は1950年福岡県生まれ。東北大教授を経て宮城学院女子大学長。日本近世史専攻。
 中央公論新社03(5299)1730=972円。


2018年05月27日日曜日


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