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<岩手・宮城内陸地震10年>ランプの宿 再起へ奮闘 栗原・花山の三浦旅館

灯油ランプを磨く千空さん(手前)と治さん

 栗駒山麓の「ランプの宿」で知られ、2008年の岩手・宮城内陸地震から再起した湯浜温泉三浦旅館(宮城県栗原市花山)で、4代目主人三浦治さん(63)の長男千空(ちひろ)さん(29)が宿の切り盛りに汗を流している。6月14日で発生から10年。長期休業の影響で客離れは止まらないが、千空さんは「いずれは自分がこの宿を引っ張る」と決意を示す。

 「キュッ、キュッ」。新緑がまぶしい5月中旬の週末。千空さんが廊下で灯油ランプを黙々と磨いた。
 平日は栗原市一迫にある自宅近くの介護施設で働き、日曜に山に通って旅館を手伝う。休日返上の二重生活も「山が好きだから苦にならない」と笑う。
 千空さんは幼稚園に入るまで三浦旅館で育ち、入園後は現在の自宅に移り、週末を旅館で過ごした。元マタギで3代目主人の祖父昭一さん(故人)からキノコ採り、渓流釣りなど山のいろはを教わった。
 東京都の大学に進んだ翌年、内陸地震が発生。宿の源泉が枯れ、1876年の開業以来初の長期休業に追い込まれた。再開準備中の2011年に東日本大震災が起き、再び源泉が枯渇した。
 電話で家族の安否確認こそしたが、帰省して宿を手伝うことはなかった。「当時は学生気分で、対岸の火事だった」と振り返る。
 宿は13年4月に通年営業を再開。大学卒業後に都内や仙台市内で送っていた会社員生活に疑問が芽生えた。「人工物ばかりの都会と比べ、ありのままの自然に抱かれる宿の素晴らしさを思う時間が長くなった」。15年にUターン就職し、宿の手伝いを始めた。
 長期休業が響き、山菜や川魚を売りにする宿の経営は厳しい。東京電力福島第1原発事故の風評被害も追い打ちをかけ、年間約1000人いた宿泊客は3分の1に減った。だが千空さんの情熱は冷めない。昨年から栗駒山の夏山開きに合わせた出発式を仲間と企画。かつて地域に根付いていたマタギ文化の発信やジビエ料理の提供など新たな構想も練る。
 昨年12月に昭一さんが亡くなり、後継者としての自覚がさらに強くなった。治さんは「見ていて頼もしい。いずれはバトンを渡し、若い感性で新しい歴史を築いてほしい」と願う。
 千空さんは「電気も携帯電話も通じない非日常の空間は多忙な現代にこそ求められる。この魅力を磨き、歴史ある宿の灯をともし続けたい」と力を込める。


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2018年05月28日月曜日


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