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<仙台いやすこ歩き>(80)ベーグル/もちもち かむほど甘く

 雨上がりの朝、ツバメが低空飛行している。
 「楽しみにしていたパンのイベント、行けなかったね」「うん、残念」。そんな会話をしていたら、パン好き画伯が目を輝かせて言いだした。「ベーグル屋さんに行こう!」
 2人は仙台市地下鉄に乗って南へ。やってきたのは終点富沢駅から徒歩5分ほどの「ベーグルU(ユー)」。店先には、焼き上がったばかりの甘い香りとともに、さまざまなベーグルがおいしそうに並び、もう生唾ゴックンのいやすこだ。
 迎えてくれたのは、師友紀(もろゆうき)さん(40)。早速、ベーグルについて教えていただく。
 「パンはパン種を発酵させて焼き上げて作るのですが、発酵の後に『ゆでる』という手間を加えて作るのがベーグルです」。ちょうど、ゆでる工程が見られるというので奥の調理場へ。既に成形され、発酵した生地が大鍋の湯の中に入れられていく。途中、上下をひっくり返して計約1分。オーブンへ移し、12〜14分焼くと出来上がりだ。
 「ゆでることでパンの表面は固まりますが、中では発酵が続いていて、もっと膨らもうとするんです。だから、ぎゅっと詰まった独特の歯応えになるんですよ」と、師さんはにっこり。
 師さんがベーグル屋さんになった始まりに、1冊の本があったそうだ。「大草原の小さな家」。小学生の時に読み、出てくるおいしそうなカントリースイーツに魅せられ、アメリカに行きたい、菓子作りをしたいと憧れていたという。
 19歳でアメリカの語学学校に留学。帰国後、パン屋さんや菓子店で働きながらお金をためて、4年後に再度ニューヨークへ行き、製パン学校でパン作りを学んだ。その頃、ニューヨークではベーグルがさまざまな広がりを見せていて、最初に師さんが口にした硬いだけのイメージとは異なるソフトなベーグルに出合い、印象的だったそう。ソフトでチューイングガムのように引きがある、かみ応えのあるベーグル。それこそ、師さんが目指すところとなった。
 仙台に帰ってきた師さん。飲食店を始めたいというお母さんの思いとも重なった。聞けば、お母さんは料理学校を卒業し、子育てを経て、50歳を前に長年の夢を実現させようとしていた時。母娘それぞれ、描いていた憧れを実現させ、お店がオープンしたというわけだ。今年で17年目を迎える。
 毎日早朝から作るベーグルは20種以上。9種類が定番であとは日替わり。全てが手作りだから、ものすごく忙しいわけだが、調理場には温かくてゆったりした空気が流れている。並んでいるベーグルたちも幸せそうだ。
 あれもこれもと買って来たいやすこ。まずはプレーンベーグルを温め、二つに割り、バターを塗って口へ。カリッとした皮の歯触りの後のモッチリ感。かんでもかんでも跳ね返ってくる弾力。「確かに引きがある!」。かみしめるほどに甘く、深く、香ばしく…。う〜ん、くせになりそう。今度の休日はベーグル片手に、海の向こうの文学でも読んでみようっと。

◎卵や油使わずシンプルに

 ベーグルは、約500年前に東ヨーロッパのユダヤ人コミュニティーで誕生したと言われる。食の戒律の厳しいユダヤ人のための食べ物であり、通常のパンと違って、基本の小麦粉生地にはバター(油類)、卵、牛乳を使用していない。
 ベーグルは新天地を求めた移民と共に大西洋を渡り、ニューヨークの港に着く。ロウアー・イーストサイドのユダヤ人街で、棒に刺して売られていた珍しいパンは、ニューヨーカーの目に留まり、街中に広がった。
 製法もシンプルで、小麦粉の生地をひも状に伸ばし、両端を合わせて輪の形にして発酵させ、ゆでた後でオーブンで焼く。プレーンベーグルの原料は、小麦粉、酵母、塩、砂糖のみ。この基本生地に具材を混ぜたり、また、プレーンベーグルに具材を載せたり、サンドしたりとさまざまなバリエーションが楽しめる。
 ちなみにベーグルの名は、円形のパンを意味するイディッシュ語(ユダヤ系言語)からきているという説がある。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。
=次回は6月11日掲載=


2018年05月28日月曜日


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