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<週刊せんだい>書店事情2018(4完)文化継承/店の枠超え経験伝える

6月に開く次回のあそぶ会に向け、打ち合わせをする(左から)加藤さん、増田さん、室さんら=5月上旬、仙台市青葉区
ブック・ブック・センダイ主催で4月下旬に開かれた本の市。震災後にオープンした書店など「本のある空間」が集結した=仙台市若林区新寺

 昨年6月、仙台市内で小さな勉強会が始まった。「子どものほんとあそぶ会」。青葉区中央にある児童書専門店「ポラン」の店主増田家次子(かじこ)さん(83)を、市内の書店の児童書担当ら7、8人が囲む。売り場の最前線にいる書店員が店の枠を超えて集う場は珍しい。

<一生の宝選び>
 ポランは1977年にオープン。増田さんは90年から店を1人で切り盛りしてきた。数カ月に1度のあそぶ会では参加者が質問をぶつけたり、お薦めの本を紹介し合ったり。気軽な雰囲気の中、増田さんの言葉に耳を傾ける。
 「本選びで相談されたら時間をかけて向き合って、いろいろ聞いて一緒に選んであげて」「本の対象年齢は目安。年齢で判断しないで。子どもが読みたいと思って選んだ本が一生の宝になる」「親子で絵本を読む時間を共有することが、2人の人生を豊かにするんだよ」
 「勉強になる。ふとした瞬間の言葉もメモしてしまう」と事務局を務める紀伊國屋書店仙台店(太白区)の室和未さん(35)。増田さんは「思った以上に一人一人が純粋に仕事に取り組んでいる。話していて楽しい」とほほ笑む。

<未来育む思い>
 あそぶ会は、同店の元書店員加藤敦子さん(70)が増田さんに打診して実現した。「声の掛け方一つで本から離れてしまう子どもがいるかもしれない。手探りで仕事をしている若い世代に、経験を引き継いでほしい」。読書離れが進む中で、未来の読者を育もうという思いが根底にある。
 仙台で本の魅力を広めようと活動してきた「Book!Book!Sendai(ブック・ブック・センダイ)」は今年、10周年を迎えた。

<出合う空間を>
 地元書店の閉店が相次ぎ危機感を募らせた有志が、一箱古本市など多彩な書籍イベントを手掛けてきた。だが「イベントに人が集まっても、その流れが日常につながらなかった」。事務局の古書店主前野久美子さん(49)は話す。東日本大震災後、仙台の街の書店はさらに減った。
 一方で宮城県内の被災地を中心に書店・古書店や本を置くコミュニティースペースなどが幾つも生まれ「励まされた」と前野さん。カフェやインターネット販売を組み合わせるなど運営手法もさまざまだ。
 「本があることで会話が生まれたり、居やすい空間になったりする。そうした作用に気付いた人が多かったのでは。本の魅力は弱まっていないし、運営方法の選択肢は増えている」
 厳しい環境の中にあっても、本と読者の出合いをつくろうとする動きは止まっていない。

◎本屋さん 私の歩き方/イラストレーター 佐藤ジュンコさん 並べ方の工夫楽しむ

 小さいときからずっと、本が好きです。大学卒業後、アルバイトしたり、辞めたりとふらふらしていた時に、友人に「一番好きなもののそばで働くのがいいのでは」と言われて書店で働き始め、2014年春まで勤めました。
 本自体は全国で同じものが売られているけれど、並べ方一つで見え方が違うんです。書店員時代「この棚はこういう雰囲気にしよう」「この本を読む人は、こっちも好きかな、好きになってほしいな」「この本の隣にこの本を置いたのを気付いて」という気持ちで一生懸命並べ方を考えていました。
 だから、書店に行っても書店員の意図が表れた棚には敏感で「いい並びだな」「工夫しているんだろうな」と見ちゃいます。入り口近くの新刊や今売れている本が集められたところ以外をうろうろして、奥の方で展開されている企画を見つけるのが結構楽しいんです。
 あゆみBOOKS仙台一番町店は入り口の左側に、しっかり選んで本を置いたんだな、と感じる棚があり、お店のベクトルが見えるようで必ずチェックします。
 くまざわ書店エスパル仙台店の人文科学のコーナーも気になります。難しいかと手を出さないでいたジャンルですが、ここでは魅力的に見えます。駅ビルにあり、女性客に向けた品ぞろえの中で、そのコーナーは「本屋の矜持(きょうじ)」という感じがします。
 書店を辞めてから本との付き合い方も変わりました。読むジャンルは広がり、地元に関わる本や、人に薦められた本を読むことが増えました。書店員時代に推していた作家の作品を改めて読むことあります。
 旅先で書店に立ち寄るのも楽しみです。自分のお土産に本を買うんです。どこでも売っているけれど、あそこで買ったな、店長さんと話したな、と思い出になります。

[さとう・じゅんこ]1978年伊達市(旧福島県霊山町)生まれ。宮城教育大教育学部卒。毎週月曜の河北新報夕刊で漫画エッセー「街で会いましょう」を連載中。新著「佐藤ジュンコのおなか福福日記」(ミシマ社)を22日に出版した。39歳。仙台市青葉区在住。


関連ページ: 宮城 文化・暮らし

2018年05月31日木曜日


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