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<東北の本棚>「生涯彫刻家」多面的に

◎語られる佐藤忠良 小川幸造・藤井匡・前田朗 編

 宮城県大和町出身の彫刻家佐藤忠良さん(1912〜2011年)が設立に関わり、長く教壇に立った東京造形大で2015年度、教え子の彫刻家たちによる特別講座「佐藤忠良の美術とデザイン」が行われた。本書はその全14回の講義をまとめた。
 「群馬の人」(1952年)をはじめ、佐藤さんは市井の人々がモデルの頭部彫像を多数制作した。一般的な美の尺度から外れた作品群は批評家たちからややネガティブな意味で「穢(きたな)づくり」と呼ばれた。しかしそれは、強く影響を受けたオーギュスト・ロダンの「哲学」と通じるものだった。
 醜い男を写したロダンの「鼻のつぶれた男」(1863年)が当時のフランス彫刻界で冷遇されたことに触れ、佐藤さんはこう記した。「踏みつけられながら生きてきた路傍の人間たちの中に眼を注いだロダンの庶民性であり、醜から美をつかみ出したロダンの哲学であった」(「美術手帖」1959年6月号増刊)
 66年に東京造形大教授に就いたが、創作に対する真摯(しんし)な態度は変わらなかった。「教室で先生らしい口のきき方をしてはいるが、いざ自分の仕事となると、学生と同じようなところで往(い)ったり来たりの始末なのである」(自伝「つぶれた帽子」)
 「彫刻は田んぼの泥あぜを歩くように」と説いた。急ぐと崩れ、止まると沈む。だから休まず、一歩一歩進まなければならない。「生涯彫刻家」らしい言葉だった。
 戦時中は召集されて満州で死線をさまよい、シベリア抑留生活も経験。絵本作りや美術教科書編集に力を注いだ横顔を含め、佐藤さんの人物像と作品世界が教え子たちの語りを通じて立体的に浮かび上がる。
 学校法人桑沢学園042(637)8111=3240円。


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2018年06月03日日曜日


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