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<まちかどエッセー・鈴木弘二>古いものと新しいもの

[すずき・こうじさん]建築家。61年仙台市生まれ。日大理工学部建築科卒、同大大学院修了。現在、鈴木弘人設計事務所代表取締役社長。日本建築家協会本部理事・副会長、東北支部長。東北大、仙台高専、宮城大で非常勤講師を務めた。仙台藩香道と料理、釣り、ゴルフ、旅行が趣味。仙台市青葉区在住。

 テレビでお宝ものが大人気です。私もその手の番組が好きで、録画して暇な時にニタニタと見ています。
 番組の面白さは、自分の家にある古いもの(お宝)に価値があるかを著名な鑑定士の先生方に鑑定してもらうことにあります。おじいちゃんやお父さんが「すごいものだ」と伝え聞いてきた疑わしい話を一気に解決してくれるところが魅力で、さらに贋作(がんさく)(偽物)と鑑定されると実に痛快です。
 このようなメディアの影響もあってか、近年ますます、骨董(こっとう)をはじめビンテージものの服、車、雑貨、ワインなど古いものに対して多くの人が興味を抱くようになったと感じます。
 実は、建築の世界でも同じようなことが見られます。古い伝統建築の民家、町屋、農家、蔵など解体される建物を購入し移築して住宅や店舗などに再生・利活用する人が増えています。
 1軒そのまま購入し、家として活用する人もいれば大きな梁(はり)、柱、小屋組みなど部分的に購入し、インテリアや新築の一部の部材として転用する人もいます。
 「古材バンク」といった、古い材木や古民家を扱う商売が続々現れ、繁盛しています。古民家や古民家風建築を専門に設計する建築家も大忙し。しかし、古い伝統的建築を施工できる大工や左官などの職人さんが少なくなり、今後が心配でもあります。
 街には昭和に建てられた築40年程度の建築物がまん延しています。ここでもコンクリート造のオフィスビルやアパート、使われなくなった公共施設が、カフェ、シェアハウス、シェアオフィス、民泊施設、高齢者施設、市民ギャラリーなどに再生・利活用されるようになってきています。
 それは、スクラップ&ビルドが当たり前の高度成長時代の時とは違い、古いものに価値を認め、壊さずになんとか残し、別な用途に使うことを考える人たちや、それをビジネスとする企業が増えていることを意味しています。
 「古いもの」(文化)と「新しいもの」(未来)を融合し、それをうまく利用し豊かな生活を楽しむ社会が訪れたことをうれしく思います。(建築家)


2018年06月04日月曜日


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