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<東京検分録>防災庁構想 大災害一元的対応は急務

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震が懸念される状況下、国の危機管理体制は不断の改善が欠かせない。東日本大震災の教訓を踏まえ、全国知事会は「防災庁」(仮称)の創設を提言。対する政府は省庁間の連携強化を打ち出すにとどまり、議論は停滞している。
 鈴木英敬三重県知事は5月15日、防災庁の実現を小此木八郎防災担当相に要望した。「過去の教訓や知見、高度な専門性を持ち、平時の防災減災から復旧復興まで総合的に担う体制が必要」と主張。2021年3月末で廃止される復興庁を引き継ぐ形も想定する。
 防災庁は、昨年7月に盛岡市であった全国知事会議の「岩手宣言」に盛り込まれた。知事会危機管理・防災特別委員長の鈴木氏は「強力な調整権限がある組織であってほしい」と強調。札幌市で7月下旬に予定される全国知事会議でも議題とし、肉付けを図る考え。
 防災庁構想に政府は消極的だ。15年3月の副大臣会合でまとめた報告書は、内閣官房と内閣府が総合調整して関係省庁が対応する現在の仕組みを「一定程度合理性があり機能している」と指摘。危機管理官庁の新設を「直ちに必要性は見いだし難い」と結論付けた。
 理由には(1)事務内容や専門性が異なり、統合のメリットを生み出しにくい(2)組織の肥大化で迅速性や的確性が損なわれる(3)他省庁が主体的に災害対応に取り組まなくなる−といった懸念を挙げた。小此木氏も「まず関係省庁の連携を強化することで一応収まっている現状がある」と説明する。
 「災害対応のプロ集団の育成は必要だ。早くつくった方がいい」と反論するのは元復興相の平野達男氏(参院岩手選挙区)。「3.11が風化し、国の災害への意識が薄くなっている」と警鐘を鳴らす。
 首都直下地震など今後想定される巨大災害がもたらす国家機能のまひは、震災の比ではないだろう。首都機能のバックアップ、複合災害への備え、ポスト復興庁の姿−。危機管理上の弱点をつぶし、大災害に一元的に対応できる新システムの検討が急務ではないか。「想定外」は許されない。
(東京支社・瀬川元章)


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2018年06月04日月曜日


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