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<週刊せんだい>自転車、より快適に(1)行動範囲拡大危険増す

スタントマンが事故を再現した交通安全教室=5月23日、仙台市泉区の東北生活文化大高
仙台市の動画「伊達武将隊と学ぶ 自転車安全利用のすすめ ヘルメット着用編」。歩行者優先編、傘差し運転編、無灯火編、保険加入編と続く

◎事故率の高い高校生 ヘルメット着用、命守る鍵

 「実際にあった悲惨な事故の再現です」。アナウンスに続き、時速40キロで走る車の前に、自転車が飛び出す。激しい衝突音とともに自転車の運転者が車のボンネットに跳ね上げられると、見ていた生徒たちがどよめいた。
 仙台市が2015年度から市内の中学や高校で行っている自動車交通安全教室の一コマ。スタントマンによる衝突事故などの再現で怖さを実感してもらい、交通安全意識の啓発を図る。
 泉区の東北生活文化大高で5月23日にあった教室で、3年の加藤旺生(あきなり)さん(17)は、車の後部座席に乗り、再現された衝突の瞬間を味わった。「怖かった。本物の事故のような迫力があった」と交通安全への認識を新たにしていた。東北学院中高(宮城野区)でも29日に開催。高3の斎藤優太郎さん(17)は「左側通行を心掛けているが、左右の確認などはそれほどしっかりしていない。もっと気を付けないと」と気を引き締めていた。
 宮城県警によると、宮城県内で17年に起きた自転車事故の死傷者1021人のうち、17.6%の180人を高校生が占めた。65歳以上の高齢者(154人、15.1%)より多く、県警交通企画課の手島俊明交通事故総合分析室長は「中学までに比べて格段に行動範囲が広がり、無謀な運転も目立つためだろう」と話す。
 東北生活文化大高2年の長牛大空(そら)さん(16)は4月末、宮城野区の自宅から自転車で登校中に事故に遭ったばかり。交差点を横断中に右折車とぶつかった。軽いけがで済んだが「一時停止をして、気を付けて渡ったつもりでも事故に遭った。無謀な運転をしていたらどうなったか」と事故の恐怖を振り返る。
 警察庁によると、13〜17年の自転車乗用中の年齢別平均死傷者数で最も多かったのは16歳の5218.4人だった。ちょうど高校1、2年生に当たる。5〜7月に多発し、登下校中の事故が半数以上という。高校に入り、自転車通学を始めた新入生が、少し慣れた頃に事故に遭いやすい構図が浮かび上がる。
 東北学院高3年の今野孝彦さん(17)も中1の6月、泉区の自宅から自転車で登校中、交差点を直進しようとして左折車と接触したことがある。以来「自転車運転の際は細心の注意をしないといけない」と気を付けている。
 仙台市は4〜5月、観光PR集団の伊達武将隊が自転車の交通安全を呼び掛ける動画をインターネットで公開した。5回続きの1回目で呼び掛けたのはヘルメットの着用。秋の制定に向け、準備を進める「自転車の安全利用に関する条例」でも、ヘルメット着用推進を強く打ち出す方針だ。
 13〜17年、全国で自転車に乗っていて事故に遭い、死亡した高校生は58人。うち40人が頭を強く打って亡くなったが、1人もヘルメットを着けていなかった。ヘルメット非着用者の致死率は、着用者に比べて高く、ヘルメット装着で救えただろう命は少なくない。
 事故の怖さを再現した交通安全教室で目を丸くし、青ざめていた生徒たちにヘルメット着用を聞くと「安全なのは分かるけど恥ずかしい…」。交通安全だけでは割り切れない若者の複雑な心理が垣間見えた。

 多くの人が身近な移動手段として利用する自転車の交通安全を改めて考え、その楽しみ方を紹介します。


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2018年06月07日木曜日


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