秋田のニュース

止まらぬクマ被害…秋田県内、対策手探り 昨年は目撃件数最多、狩猟者の育成急務

道路脇を歩くクマの親子。行動範囲は住民の生活圏にまで広がり、対策が急務になっている(秋田県提供)

 秋田県内の自治体が、相次ぐツキノワグマによる被害への対策に追われている。昨年はクマの目撃件数が最多を記録し、人身被害も続いた。集落の過疎化による里山の荒廃などが要因として指摘され、人間社会との共生を巡る駆け引きが続いている。(秋田総局・鈴木俊平)

 県によると2017年度の目撃件数は前年度比434件増の1303件に上った。人身被害は19件20人。いずれも過去最多だった。
 少子高齢化と過疎化が進み、耕作放棄地や荒れた里山が増えた。生態系のバランス維持の役割を担う狩猟者も減少。これらを背景にクマの生息域が拡大したことが、目撃数増加などの一因とみられる。
 鹿角市では16年5〜6月、山菜採り中の男女4人がクマに襲われ死亡した。市は山菜シーズンに合わせ、現場周辺の市道を通行止めにし山林の入り口にバリケードを設置。私有地にもロープを張るなどして入山規制を続けている。
 入山者が減ったためか、例年10件ほど発生する山菜採り中などの遭難事故は昨年は1件だけだった。だが市農林課は「クマの目撃件数の増加は、人間と遭遇する機会が増えている証拠だ」と神経をとがらす。
 鹿角署は5月、ウェブ上の地図にクマの出没箇所を随時更新する独自の取り組みを始めた。山に入る際は目撃現場に近づかないよう注意を促すが、県警幹部は「相手が動物だけに動きは読めず、確実な被害防止には入山自粛しかない」と言う。
 北秋田市の国指定遺跡「伊勢堂岱(いせどうたい)」では16〜17年、クマの出没が相次ぎ、2年連続で一般公開を中止した。17年7月に見回り中の職員がクマに襲撃され、本格的な対策に乗りださざるを得なかった。
 遺跡南側の杉林約3万平方メートルを伐採して緩衝地を整備し、本年度は公開しているエリアの周囲約1キロに電気柵を設置。クマなどの動物を捉えるとメールで職員に知らせるネットワークカメラを3台導入した。
 市とガイドボランティアの連絡体制強化を図る安全マニュアルも作成し、ハードとソフトの両面で臨む。しかし市教委生涯学習課は「文化財敷地内でのクマ対策は全国でも例がなく、手探りの状態。改善を重ねていくしかない」と悩む。
 有害駆除などを目的にした17年度のクマの捕獲数は、県によると過去最多の834頭(16年度は476頭)に上った。木の実の凶作により餌を求めたクマが人里に出没し、農作物被害や住民に危害を加える危険性が高まったことが要因だ。
 止まらないクマ被害を受け、県内の狩猟免許取得者は増加傾向にある。12年度には30人に届かなかったが、17年度は188人が狩猟資格を得た。
 県全体の狩猟者数はピーク時の2割以下である1691人(17年度)に激減しているものの、免許取得者が増加に転じたことは、クマの被害対策を進める上では光明と言える。
 こうした状況を踏まえ、県は狩猟者の人材育成の一環として、由利本荘市の県総合射撃場で実技訓練の機会を設ける方針。散弾の鉛による土壌汚染対策などを講じた上で、20年度内の運営開始を目指している。
 県自然保護課は「生態系のバランス維持には狩猟者の存在が不可欠。市民生活の安全確保と動物保護の在り方を模索したい」と語る。


関連ページ: 秋田 政治・行政

2018年06月07日木曜日


先頭に戻る