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<大槌町旧庁舎>「壊す前に」真相究明を 解体に突き進む町、遺族ら思い複雑

18日にも解体が始まる大槌町旧役場庁舎

 東日本大震災の津波で町職員ら40人が犠牲になった岩手県大槌町の旧役場庁舎の解体作業が18日にも始まる。異論が残る中、解体に突き進む町の姿勢を職員の遺族は複雑な思いで見つめてきた。過去2回の検証を経ても、肉親の最期の状況は分からない。「壊す前にやるべきことがあるはずだ」。そう訴える。
 「あんな検証は意味がない」。町の会社員倉堀康さん(34)が憤る。町職員だった兄=当時(30)=が行方不明になっている。庁舎前に設置された災害対策本部にいて津波にのまれたとみられる。
 町は2013年度に災害対応の検証結果を公表。議会や町民に不十分と指摘され、改めて17年度に検証結果をまとめた。
 しかし、どちらの検証からも災対本部の人の動きや幹部職員の指示の詳細は読み取れなかった。平野公三町長は当時、防災担当の総務課主幹。災対本部に詰めていたが、平野町長を含む役場関係者80人から聴き取った調書類は公開されないままだ。
 旧庁舎の解体を望む倉堀さんだが「何が起きたのかを全て明らかにし、後世に伝えることが最重要」と訴える。そのため、拙速な解体に反対し、震災検証の徹底を求める住民団体の主張にも一定の理解を示す。
 倉堀さん以外にも、「なぜ、命を落とさなければならなかったのか」との疑問を抱き続ける職員遺族は少なくない。検証報告書の送付も、遺族向け説明会の開催もしてこなかった町の対応が不信感を増幅させる。
 「生き証人」の一人、平野町長は「いくら説明しても納得してもらえるはずがない」と強弁。「検証の不十分さを承知した上で防災訓練などに生かす」「(必要なら個別に)当時の状況は知り得る限り話す」との姿勢を崩さない。

<検証の機運冷める/斎藤徳美岩手大名誉教授(地域防災)の話>
 震災で避難指示を出さずに町民の犠牲を拡大させた「失策」を含め、徹底的な検証と対策を議論する中で町は旧庁舎の存廃を判断するべきだった。旧庁舎を解体してしまえば、危機意識を保って防災に取り組むためのよりどころがなくなり、検証の機運も冷めてしまうだろう。


2018年06月10日日曜日


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