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<宮城県沖地震40年>手を携え備えへ動く 自主防災のいま

ゲームを通じ、地域や防災を学ぶ子どもたち=2017年11月
自主防災組織が設置した防災倉庫を点検する保坂さん(右)ら
避難経路を示す誘導灯
[おいかわ・ゆかり]1996年、東北初の女性消防官として仙台市消防局に採用される。若林消防署などを経て、昨年4月から現職。村山市出身。44歳。

 1978年6月12日に発生し、28人が犠牲になった宮城県沖地震から40年となった。戦後初の都市型災害とされ、直撃を受けた仙台市では宅地崩壊やブロック塀の倒壊など大きな被害が出た。「あの日」を振り返りながら、東日本大震災を経てますます重要視される「備え」のいまを考える。(報道部震災取材班)

◎次世代の担い手育成/仙台・片平地区まちづくり会

 仙台市青葉区片平地区の町内会などで構成する「片平地区まちづくり会」は東日本大震災を教訓に、防災行動マップ作成や避難所整備、地域の外国人と連携した訓練など多様な取り組みを展開する。子どもたちの防災学習やまちづくり活動も推進し、共助の先進例として注目される。
 震災後、地域の指定避難所の片平丁小には一時、3000人近くが殺到した。近隣には東北大の留学生が多く、外国人避難者への対応で混乱した。
 反省を基に、会は2012年以降、地区の防災訓練で企画段階から留学生らに参加してもらい、相互の理解を促進。地区の避難場所や避難方法などをまとめた防災行動マップの日本語版と英語版を作成し、配布した。今野均会長(76)は「日頃から外国人の住民をお客さん扱いせずに活動する必要がある」と話す。
 次世代の担い手育成にも力を入れる。15年度、地域学習に取り組んだ当時の片平丁小6年生らが結成した片平子どもまちづくり隊を部会の一つに位置付けた。16年度からは毎年、小中学生らが住民の話を聞きながら街を散策し、災害時の危険箇所や地域の歴史を学ぶゲームを開催している。
 まちづくり会メンバーで子どもたちの活動をサポートする会社員溝井貴久さん(34)は「地域に愛着を持ってもらうことが防災につながる」と強調。まちづくり隊代表で、ゲームに参加した五橋中2年菅原直之さん(13)は「いろいろな人々と関わる機会が増え、地元について学ぶことができる」と実感する。
 まちづくり会は今後、震災後の活動を検証し、各地で被害が相次ぐ大雨災害の対策にも力を入れる方針だ。今野会長は「高齢者の孤立防止などの課題もあり、多様な観点から取り組みたい」との考えを示す。

◎交流深め活動の礎に/マンション ライオンズ長町南第2

 仙台市太白区の「ライオンズマンション長町南第2」では意欲的に防災活動を展開し、住人同士が共に助け合える「顔の見える関係づくり」を目指す。
 入居者約10人が5月中旬、太白区の大年寺などを散策した後、1階集会所で茶菓を囲んで懇談した。2014年に始めた講座「ぼうさいカフェ」の一環で、地元の地理や歴史を学び、防災に生かす試み。年5回ほど開催し、地名の由来と災害の関係、長町−利府断層などを取り上げた。
 築30年のマンションには27世帯が暮らす。半壊判定された11年の東日本大震災前まで交流は活発ではなかった。14年に自主防災組織を結成。防災マニュアルを作り、防災倉庫を購入して備蓄品をそろえた。
 毎年3月、避難訓練を実施。風化を防ぐ意味も込めて毎月、当番制で発電機を点検する。かつて物置状態だった集会所は、いつでも使えるようにした。
 防災組織の設立時に理事長だった保坂誠さん(70)は「入居者にはさまざまなスキルや能力を持つ人々がおり、活動の力になる」と強調し「べったりした近所付き合いではなく、緩くつながることがマンション流のこつ」と話す。

◎通信網や誘導灯整備/企業 仙台卸商センター

 宮城県沖地震で加盟業者3社が全壊、241社が一部損壊する大きな被害に遭った仙台市若林区の協同組合仙台卸商センター。約17万坪に252社が集積する全国有数の卸商団地はいま、防災に力を入れたエリアに生まれ変わりつつある。
 団地は2011年の東日本大震災でも大きなダメージを受け、30社が建て替えを迫られた。15年、国の安心・安全まちづくり整備事業でインフラを一新。公衆無線LAN「Wi−Fi(ワイファイ)」を導入し、災害時は衛星通信に切り替え、連絡手段が途切れないよう対策を強化した。
 防犯カメラ付きの街路灯21台は災害時、赤色に変わって避難者らに注意を促す仕組みとし、避難経路を示す誘導灯を18台設置した。市地下鉄東西線の開業に伴って15年に卸町駅ができ、16年には卸商センター事務局が入居する複合型災害公営住宅が完成した。
 17、18年度は区のモデル地区に指定され、住民と連携した防災や防犯活動などの取り組みも始まった。卸商センターの担当者は「2度の被災を乗り越えた会員企業がこの先も事業を発展できるよう、災害に強い街づくりを進めたい」と意気込む。

◎地域の災害リスク把握を/仙台市防災・減災アドバイザー及川由佳里さん

 仙台市の防災・減災アドバイザー及川由佳里さんに、災害に向けた心構えなどを聞いた。
 −地震から身を守る上で重要なポイントは何か。
 「自分の身は自分で守るのが基本。地震が起きたら机やテーブルの下に身を隠すと分かっていても、訓練の機会が少ない大人は万が一の時に動けない場合がある。宮城県沖地震では、とっさに屋外に飛び出して、けがをしたケースもあった。身近な場所で避難訓練に参加してほしい」

 −日頃の備えは。
 「食料の備蓄は1週間分が必要。高いハードルに感じられるかもしれないが、レトルト食品や乾麺を食べながら買い足す循環備蓄ならば案外、難しくない。複数の部屋で分散保管が望ましい。まず飲料水から始めてはどうか。家具を寝室に置かざるを得ない場合は、ベッドや入り口をふさがない配置にしてほしい」

 −共助も大切になる。
 「仙台市では宮城県沖地震以降、町内会単位の自主防災組織の結成を推進してきた。組織率は9割以上だが、防災訓練の参加者や内容はマンネリ化している地域もある。住民同士が平時から顔の見える関係をつくることが欠かせない」

 −豪雨や土砂崩れ、噴火など多様な災害に向けた取り組みとは。
 「ハザードマップで自分の住む地域の災害リスクを把握する必要がある。災害を想定して、どう行動するか具体的にイメージすることが備えになる。避難所までのルートに危険箇所がないかも確かめてほしい」

 −昨年、女性初のアドバイザーに就いた。
 「今まで防災に関心が薄かった若い世代や女性への呼び掛けが自分の役割。お母さんには、小さな子どもにカードゲームで防災を教えたり、非常食の料理会を開くことなどを提案している。主婦の視点で防災グッズを100円ショップでそろえるのも面白い。楽しみながら取り組んでほしい」


関連ページ: 宮城 社会

2018年06月12日火曜日


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