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<宮城県沖地震40年>再来リスク(下)津波防災 最大級想定 重い課題 避難態勢の見直し急務

沿岸部で建設が進む巨大防潮堤。堤高を上回るレベルを想定した津波対策の検討が今後、被災自治体に求められる=石巻市

 国や東北各県が防災体制を見直すきっかけとなった宮城県沖地震の発生から、12日で40年となる。2011年3月11日の東日本大震災後も、科学者は宮城県沖を含めた太平洋側で大地震や大津波が起こりうるとして、警鐘を鳴らし続ける。「6.12」の教訓を振り返りながら「3.11」後の備えを検証する。(報道部・小沢邦嘉)

<3県未策定>
 東日本大震災の津波被害を教訓に、岩手、宮城、福島の被災3県沿岸では総延長約400キロにわたる防潮堤の建設が進む。高さは数十年〜百数十年に1度発生する津波を想定し、設計された。高さ10メートルを超える工区も計約50キロに及ぶ。
 住民の命と財産を守る巨大プロジェクトだが、自治体に防潮堤を超える水準の対策を求める法律もある。2011年12月施行の津波防災地域づくり法だ。
 発生頻度は極めて低くても、起こり得る新たな「最大級の津波」を念頭に置いて浸水域を策定するよう都道府県に義務付けた。青森など34道府県は浸水想定まで策定済みだが、被災3県は「最大津波」のシミュレーションもこれからだ。
 国土交通省の担当者は「復興まちづくりや防潮堤の整備が途上にあるなど、被災県にはやむを得ない事情もある」と現時点では容認姿勢を見せる。
 津波防災法に基づく対策は被災自治体の重い課題となりかねない。東北大災害科学国際研究所の今村文彦教授(津波工学)は「被災3県が想定すべき最大津波は、3.11の数値より大きくなる可能性もある」と指摘する。
 国交省は過去の津波実績などを基に、より厳しい条件の想定を求める。震災は干潮時に起きており、仮に満潮時なら津波は1メートルほど高くなる。浸水想定では地震による地盤沈下や、防潮堤などの構造物が破壊された場合も考慮しなければならない。

<改善策探る>
 今村教授は「3.11のように想定を超える事態は将来にわたって起こり得る。最大津波を、固定概念にとらわれず備えるための情報と理解すべきだ」と強調。「自治体は1次避難、2次避難といった多段階の防災計画を住民と協力して作ってほしい」と促す。
 1978年の宮城県沖地震で津波による被害はなく、発生した津波も最大30センチだった。それでも県は2004年、次の宮城県沖地震に向けた津波対策を想定し、気仙沼市で最大10メートルなどの推定値を公表していた。
 震災で巨大津波の襲来と甚大な被害が現実となった東北の被災地。将来想定の前に、避難態勢の見直しなど難題が山積する。
 石巻市は震災から6年以上を経た17年5月に津波避難の対策検討会議を設け、改善策を探り続けている。前年に発生した福島県沖地震に伴う津波では、避難を巡る課題が改めて浮き彫りになったからだ。
 市や東北大が津波浸水域の5000世帯に実施した調査によると、津波警報が出たにもかかわらず、避難した人は約4割にとどまった。うち半数以上は、渋滞に巻き込まれる可能性が高い車で移動していた。
 東北大の佐藤翔輔准教授(災害情報学)は「3.11の経験がある地域では、よほど大きな地震でなければリスクを低く見積もる傾向が出てきている。津波警報や注意報レベルでも警戒し、適切な避難を習慣化する取り組みが必要だ」と訴える。


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2018年06月12日火曜日


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