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<航路快拓 宮古―室蘭フェリー就航>(中)観光 新ルート創出へ連携

三陸を代表する景勝地の浄土ケ浜。フェリー効果による観光客増加が期待される

<震災遺構見学>
 紺碧(こんぺき)の海と白い岩肌が以前と変わらず輝く。宮古市の名勝「浄土ケ浜」を訪れた観光客は、東日本大震災のあった2011年こそ13万9867人に減少したが、徐々に回復。13年以降は60万〜70万人と震災前水準に戻った。
 ただ、周辺一帯は苦戦が続いている。岩手県観光統計概要によると、沿岸エリアの16年の入り込み客は387万5932人で、震災前の7割にとどまる。
 22日に就航する宮古−室蘭(北海道)フェリーの効果に「期待したい」(宮古市観光課)との声は少なくない。
 既に効果の一端が表れ始めている。5月には室蘭市の中学校が修学旅行で宮古市の震災遺構「たろう観光ホテル」などを訪れた。
 遺構の見学者は年間2万人前後で推移。防災ガイドの元田久美子さん(60)は「感性豊かな世代にもっとこの場を見てほしい」と願う。
 県など出資の第三セクター三陸鉄道(宮古市)は道内からの修学旅行生を対象にした「震災教育列車」の運行を検討する。

<関心に温度差>
 県内を訪れる旅行客が集中する盛岡市や花巻市、平泉町など内陸部。フェリー就航への関心に温度差がうかがえる。
 一関市、平泉町周辺の観光振興法人「世界遺産平泉・一関DMO」の松本数馬代表理事は「沿岸の観光振興は内陸との接点こそが重要。フェリー効果は未知数だ」と慎重に構える。
 だが、交通アクセスが難点の沿岸部に自前の玄関口ができるのは確か。岩手県北バス(盛岡市)の鈴木拓副社長は「新たな観光ルートが創出される」と期待する。
 北海道の高速バスや三陸鉄道と共同で企画乗車券を販売するほか、往路は新幹線、復路はフェリーという北海道旅行プランも企画。知恵を絞って交流人口拡大を目指す。

<道内から誘客>
 室蘭市は、年間の観光客1700万人という国内有数の観光地を抱える胆振(いぶり)地域に位置する。相互交流により、道内で増加する訪日外国人旅行者(インバウンド)を東北に呼び込む契機にもなり得る。
 19年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場となる釜石市もフェリーに注目する。大会では9月22日に札幌市、同25日に釜石市で試合が予定され、道内から大勢の観戦客の「転戦」を見込む。
 観光振興や地域づくりに詳しい東北地域環境研究室の志賀秀一代表は「船という乗り物によって新しいつながりができる。連携をキーワードに長所を磨き込み、いかにしてアピールするかが大切だ」と助言する。

[胆振地域]室蘭市など4市7町で構成。登別温泉や洞爺湖温泉、洞爺湖有珠山ジオパークなど豊富な観光資源を有する。幕末には北海道沿岸の警備で盛岡藩士が室蘭周辺に派遣されるなど、歴史的にも岩手県とのつながりが深い。


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2018年06月15日金曜日


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