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<転機の米作り>東北の現場から(中)ブランド 生き残り懸け競争過熱

だて正夢の苗を田植え機に積み込む遠藤さん。米どころ復権の期待がかかる=5月16日、仙台市若林区三本塚

 東日本大震災の津波で被害を受けた仙台市若林区三本塚地区の専業農家遠藤耕太さん(37)は5月中旬、宮城県産の新品種「だて正夢」の苗を水田1ヘクタールに丁寧に植えた。
 県産主力品種「ひとめぼれ」以来の大型銘柄は、転機を迎えた2018年産米の市場で、米どころ復権の期待を背負う。遠藤さんは「もちもちとした食味は、コメ離れが進む若い世代にも受け入れられる」と自信をのぞかせた。

<宮城産けん引>
 市場で人気があり、タンパク質が少ない低アミロースの銘柄米がなかった宮城。コメの国内消費量が減少する中、産地として生き残るためには新たな需要の掘り起こしが欠かせず、ゆめぴりか(北海道)や新之助(新潟県)などライバルひしめく高価格帯にあえて打って出る。
 激しさを増す産地間競争の中で、宮城の存在感は薄まりつつあった。県が16年に首都圏の消費者を対象に実施した調査では、ひとめぼれの産地を「宮城」と回答したのは1割強。一方、コシヒカリを「新潟」と答えたのは8割に達した。
 県は産地と銘柄が結び付くだて正夢を、品質の高さと訴求力を兼ね備えたコメに育てる青写真を描く。県農産環境課の守屋明良課長は「県産米全体をけん引する存在にしなければならない」と表情を引き締める。

<全て特A逃す>
 最高品種「金色(こんじき)の風」とブランド米「銀河のしずく」を二枚看板に据え、市場の拡大と評価の獲得を狙った岩手県。その戦略はつまずいた。
 日本穀物検定協会による17年産の食味ランキングで、金色、銀河を含めた出品全銘柄が最上位の「特A」を逃した。中でも、特Aの常連だった県南産ひとめぼれの陥落は、関係者に大きな衝撃を与えた。
 県農産園芸課は「昨年8〜9月の低温と日照不足」を理由に挙げるが、同様の気候だった宮城のひとめぼれは、1年でAから特Aに返り咲いた。
 「栽培方法が確立されていない金色と違い、ひとめぼれは宮城と条件がほぼ同じ。作り方そのものが否定されたようだ」。県南のベテラン農家は落胆の色を隠さなかった。
 関係者は18年産での巻き返しに挑む。県、農協、生産者が一丸となって栽培管理の徹底に取り組む。人工衛星を使った生育管理システムを初めて導入し、衛星の画像データなどに基づいて生育状況を把握。施肥の最適期や収穫期の判断に生かす。
 岩手ふるさと農協(奥州市)の鈴木哲也米穀部会長は「最高品質のコメを作るため、管理マニュアルをしっかり守り、必ず特Aを取り戻す」と力を込め、特A奪還を「至上課題」に位置付ける。主産地の威信と生き残りを懸けたコメ作りが熱を帯びる。


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2018年06月17日日曜日


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