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<ニュース深堀り>福島の酒 金賞銘柄数でV6 風評吹き飛ばす向上心

金賞受賞銘柄数の6年連続日本一が決まり、記念パネルの前でポーズを取る蔵元の社長ら=5月17日、福島県庁

 全国新酒鑑評会の都道府県別の金賞受賞銘柄数で、福島県が6年連続の日本一を達成した。東京電力福島第1原発事故に伴う県産品の風評払拭(ふっしょく)の先導役として「福島の酒」への期待は高まる一方だが、蔵元関係者は「あるのは良い酒を造る思いのみ」と言い切る。品質向上と金賞獲得へ重ねる努力を改めて取材し、純粋でひたむきな思いこそが、風評を吹き飛ばす力になると痛感した。

 金賞を獲得した県内19銘柄の一つ「名倉山」。単独では今回で10年連続の受賞となった。強さの理由を聞くため、会津若松市の名倉山酒造を訪ねた。
 県内蔵元が1995年に設立した高品質清酒研究会は「金取り会」の通称で知られる。名倉山酒造4代目の松本善六社長(60)は、その初代会長を務めた。
 「これが自慢の数字なんだ」と見せてくれたのはA4の1枚紙。県内の銘柄を示す数字が並ぶ。その右側には点数。研究会が鑑評会前に独自に行った模擬審査だ。
 「その後の鑑評会の結果は予測通り」と松本社長。確かに模擬審査で上位に入った銘柄の右端には、金賞獲得を意味する「☆」がしっかり書かれていた。
 約30社が参加する金取り会の活動は盛んだ。年5回ほど酒を持ち寄る。金賞を逃した蔵元は自ら敗因を語り、他社が課題を指摘。酒を絞り出す時に使う袋のカビ臭など「オフフレーバー」と呼ばれる二次的異臭の除去に力を注ぐなど、改善と品質向上を重ねてきた。
 模擬審査では本番会場となる広島県の気温などを考慮。条件を合わせる徹底ぶりに驚かされる。
 「何より蔵元同士の意見交換が活発だ」と松本社長。89年の金賞ゼロなど低迷期の屈辱をばねにして「蔵元の結束が福島の強み」と力を込める。
 県酒造組合が取り組む清酒アカデミー、県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの貢献度も大きい。センターの鈴木賢二食品・醸造科長(56)は93年のアカデミー開始から若手杜氏(とうじ)らの育成を続ける。
 アルコール度数の順に並べさせ、酸度の違いも分かるように指導。酵母や製造温度を当てる試験もする。
 鈴木さんが16年前に作った吟醸酒造りの手順書は蔵元のバイブル。酒米の出来に合わせて水加減の調整を呼び掛けるなど、毎年の助言も欠かさない。
 「改善点を分析しながら酒を飲んでほしい」と鈴木さん。「細かい助言なしで(良しあしを)判断できるようになってきた」と各蔵元の成長を評価する。
 金賞受賞がこうした積み重ねの上にあることは度々紹介されてきた。それでも関係者の品質向上に対する熱意には改めて脱帽する。
 県は6年連続日本一を大々的にアピール。報道機関も含め「風評払拭のけん引役」と決まり文句とセットで期待を背負わせているが、少し安易かもしれないと反省している。
 連覇の背景に風評払拭への強い思いがあるはず−。そんな浅はかな考えを、名倉山酒造の松本社長は「ない。良い酒造りへ団結してきた結果」ときっぱり否定した。(福島総局・柴崎吉敬)

[全国新酒鑑評会] 独立行政法人酒類総合研究所(広島県東広島市)による日本酒審査会。前年7月〜翌年6月に製造された酒を対象に成分や香味の調和などを審査する。今年(2017酒造年度)は全国850銘柄が出品され、421点が入賞し、うち232点が金賞。金賞受賞は福島、兵庫が19銘柄で最多。宮城、秋田が各13銘柄で全国4番目。福島の6年連続日本一は広島と並んでいた5年の連続記録を更新した。


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2018年06月18日月曜日


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