秋田のニュース

<転機の米作り 秋田の産地は今>第1部 風になびく苗(上)業務用米拡大を懸念

父正さんが乗る田植え機に「あきたこまち」の苗箱を積み込む友基さん(中央)=5月25日、秋田県大潟村

 今年から国によるコメの生産調整(減反)が廃止され、農家を取り巻く環境は大きく変わる。東北一のコメの産地、秋田県の農家は変化をどう受け止めているのか。美郷町と大潟村の農家2戸の田植えから収穫までを追う。(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)=4部続き

◎大潟村/米専業農家 黒瀬友基さん(40)

<減反に不参加>
 5月25日、今年の田植えは雨だった。「小雨なら苗が乾かなくていい」。入植2世の黒瀬友基さん(40)が広さ2.5ヘクタールの水田のあぜ道に立ち、父の正さん(74)が乗る田植え機に「あきたこまち」の苗箱を次々積み込んだ。
 1週間前の18日から19日にかけて県全域に降った大雨で作業が数日遅れた。今月3日までに所有する15ヘクタールへの田植えを終えると、ほっとした表情を見せた。
 次男の友基さんは東京に進学、会社勤務を経て2007年に妻と村に戻った。昨年は6月の低温、8月の雨と天候の影響を受けた。営農12年目の今も肥料をまくタイミングなどに悩む。
 父の正さんは元滋賀県職員で最後の第5次入植者として1975年に村に来た。71年に始まった減反で村は順守か反対かで長年揺れ、正さんは自由な作付けを目指すグループとして減反不参加を貫く。
 当時、コメは生産も販売も自由ではなかった。食糧管理法で農家の直接販売が規制されていたが、約30年前から農業支援者に届ける形で無農薬や減農薬栽培のコメを販売した。

<「競合増えた」>
 95年に法が廃止されると農家の参入が相次ぎ、今ではインターネット通販大手アマゾンもコメを扱う。販売会社ライスロッヂ大潟代表を父から引き継いだ友基さんは「競合が増えている」と漏らす。
 減反は「市場原理に任せない点にいびつさを感じた」と指摘する。廃止となっても全国の生産量は変わらないとみるが、意識するのは低価格の業務用米。弁当や総菜などの中食の市場拡大に伴って需要が高まっており、「村でも栽培が増えた。今年だけなのかどうか」と不安をのぞかせる。

<収量より味を>
 ライスロッヂ大潟の顧客は卸売会社と個人が半々。個人は首都圏や大阪、名古屋などに約1500人いるが、「長年継続する人は家族構成の変化で購入量が減っている」と明かす。
 「あきたこまち」5キロの販売価格は無農薬栽培3325円(税別)、減農薬栽培2500円(同)。手作業で水田を除草するなど、収量よりも味を求めるために割高になる。
 購入者には品質に納得してもらっている。「それでもスーパーの値段と比べることもあるだろう。価格差に抵抗感を持つかもしれない」。読めない消費の行方に気をもんでいる。

[大潟村の稲作]
 国営八郎潟干拓事業はコメの増産を目的に1957年に着手、77年に完工した。村の農地は1万1755ヘクタール。全国から589戸が入植した。農業産出額(2016年)は118億6700万円。このうちコメが約114億円と大半を占める。


関連ページ: 秋田 社会

2018年06月19日火曜日


先頭に戻る