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<新参が挑む>EMデバイス独立1年(上)積極投資 車載リレー、アジア照準

24時間態勢でリレーを製造する白石工場

 電子機器を制御するリレー(中継)部品の製造大手であるEMデバイス(宮城県白石市)は昨年4月、NECトーキン(同)から独立して誕生した。初年度の2018年3月期売上高はNECトーキン時代より9%増えて約210億円。製造業界の世界的な活況に支えられ、上々のスタートを切った一方、今後の事業拡大に向けてはハードルも少なくない。新参メーカーの軌跡と課題を追った。(報道部・高橋公彦)

<シェア世界1位>
 白石市郊外の田園地帯にある同社工場。現在、24時間稼働態勢でサイコロほどの大きさのリレーを次々に生産する。
 電子機器を作動したり停止したりするスイッチの役割を担うリレーのうち、同社の主力は自動車のパワーウインドーやウインカーに使う車載リレーだ。顧客はアウディやBMWなどに部品を供給する1次メーカーが多く、売り上げの9割を海外向けが占める。シェア約30%は世界トップだ。
 電動スライドドアなど車の電装化や機能の多様化が進み、車載リレーのニーズは近年急増している。大衆車でも1台に20個程度使用し、高級車は100個前後に上る。同社の業績を押し上げている最大要因だ。
 小綿晶彦社長は「高級車は運転席だけだった電動シートが後部座席にも配されるようになった。小型車でも機能が多彩になり、車載リレーの使用は今後も増える」と手応えを語る。

<ライン増設急務>
 同社は中国やインドの成長を背景に旺盛な需要の継続を見込む。昨年7月には中期経営計画を策定し、22年3月期の売上高を16年度比1.5倍の300億円以上とする目標を掲げた。
 車載リレー製造を担うフィリピン工場はフル稼働を続け、同社は生産ラインの増設を迫られている。17年度、増産の設備投資に約20億円を投入。18年度はさらに2割増やす方針だ。
 NECトーキン時代もリレーは主力だったが、設備や開発への投資は他の事業に振り分けられ、ニーズに見合った規模は実現できなかったという。
 「設備投資額はNECトーキン時代の3倍。経営資源を集中投入することが可能になり、判断のスピードも速まった」。小野勉開発製造本部長は「独立はプラスに働いた」と明かす。

<EV向けが課題>
 今後の課題は電気自動車(EV)向けリレーの開発だ。パソコンなど弱電製品中心のNEC本体の流れをくむEMデバイスは、高電圧のリレーを扱うノウハウが少なく、EV向けで他社に出遅れた。同社は18年度の開発予算を従来の3倍に増やし、巻き返しを図る。
 リレー機能を代替する半導体からの攻勢もある。高価な半導体に対し、リレーは熱が出ない安全性やコストで立ち向かう。
 小野本部長は「市場の動きをいち早くつかみ、対応していかなければ生き残ることはできない。専業メーカーは、一つの判断の過ちが経営に直結する危機感と常に隣り合わせだ」と気を引き締める。

[EMデバイス]NECトーキン(現トーキン)の一事業部門だったが、経営基盤の強化などを目的にファンドに売却され、2017年4月独立。フィリピンのフィリピン工場で車載リレー、白石市の白石工場で通信機器などのリレーをそれぞれ製造している。


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2018年06月20日水曜日


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