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<転機の米作り 秋田の産地は今>第1部 風になびく苗(下)影落とす農協不祥事

田植え後の水田を確かめる照井さん。減反廃止や農協の不祥事など不安が募る=5月23日、秋田県美郷町

 今年から国によるコメの生産調整(減反)が廃止され、農家を取り巻く環境は大きく変わる。東北一のコメの産地、秋田県の農家は変化をどう受け止めているのか。美郷町と大潟村の農家2戸の田植えから収穫までを追う。(秋田総局・渡辺晋輔、鈴木俊平)

◎美郷町 兼業農家照井勇一さん(64)

<10ヘクタールまで拡大>
 「生き残れるだろうか」
 5月中旬、秋田県美郷町の兼業農家照井勇一さん(64)が植えたばかりの苗を眺め、深いため息をついた。
 国の生産調整(減反)が廃止され、10アール当たり7500円が支払われていた直接支払い交付金もなくなった。「農家の自立を促すというが、そんな力が地域に残っているのか」と嘆く。
 電機店を30年営みながら町内10カ所で「あきたこまち」と「ゆめおばこ」のコメ2銘柄を作付けする。担い手がいなくなった地域の水田を引き受け、父から引き継いだ小さな水田は10ヘクタールにまで拡大した。
 数年前まで野菜の生産もしていたが体力的にきつく、稲作に絞った。出荷までの作業を1人で担う。コメ作りにかかる経費を極力削り、収入が確保できるよう努力を重ねてきた。
<昨年は3割減>
 昨年7月の大雨で水田が冠水した上、低温の影響で収穫直前に約3ヘクタールでいもち病が発生。収入は例年の7割ほどに落ち込んだ。
 11月には出荷先の秋田おばこ農協(大仙市)の巨額赤字問題が発覚した。「再起を懸けて今年の稲作を始めるはずだったのに、あきれるしかなかった」
 この問題で第三者委員会は、前組合長(故人)がコメの直接販売で生じた赤字の隠蔽(いんぺい)を指示したと認定。だが「責任の所在が曖昧にされている」と感じた。
 納得のいく説明がないまま組合員は赤字改善策の一環として、2018年産から主食用米60キロ当たり500円の負担を強いられる。
 「ずさんな経営は農家への裏切りだ」と怒る照井さん。でも農協なしでは地域は衰退するとも思う。「負担はやむを得ない」とやりきれなさを覚える。

<先が読めない>
 今年は直接支払い交付金の廃止と農協の手数料負担で120万円ほどの減収となりそうだ。「間違いなくコメ作りの岐路に立たされている」と痛感する。
 外食向けなど需要が高い業務用に補助金を出す国の政策に、コメ市場の先行きが読めないとも感じる。「今は引きが強いかもしれないが、見通しが立たず手が出しにくい」と戸惑う。
 減反廃止への対応にとどまらず、地元農協が大きく揺らぐ中で始まった今年のコメ作り。試練が重なる。
 「いつもは実りが楽しみなはずなんだけど…」。生き残れるだろうか−。自問自答の答えはなかなか見つからない。

[美郷町の稲作]町の農地約6590ヘクタールのうち9割を水稲が占める。農業産出額(2016年)は65億2000万円。このうちコメが約48億9000万円。18年度の生産目安は約1万9720トン。


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2018年06月20日水曜日


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