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<岩手・宮城内陸地震10年>あの日と歩む(4)伝える 防災の意識 次世代へ

栗原市内の高原地帯を案内する藤村さん
伊藤広司さん
伊藤徳光さん

 岩手・宮城内陸地震は山々の連なりに深い傷痕を残した。地滑りや山崩れによる土木関連被害は、秋田を加えた3県で計約800カ所。国内最大規模の山地崩落が起きた栗原市の荒戸沢、谷底へ橋が落下した一関市の旧祭畤(まつるべ)大橋などが内陸直下型地震の脅威を今に伝える。貴重な震災遺構を生かし、明日への教訓にしようと奮闘する人々がいる。

◎栗原市若柳藤村哲雄さん(69)

 「ここのブナは開拓後の二次林」「あそこが水系の分水嶺(れい)です」。栗原市栗駒の高原地帯。案内役の藤村哲雄さん(69)の流れるような説明が続く。
 栗駒山麓ジオパーク推進協議会に登録する41人のジオガイドの一人だ。協議会の部会長も務める。月に2、3回、学習会や視察ツアーでガイドを受け持っている。
 内陸地震では荒砥沢崩落地などがジオパークに認定された。現地案内を通し、悲劇の風化を防ぎ、次代に防災意識をつなぐのが自らの役割と見定めている。
 一関高専で技術職員として働いた。定年間近だった2008年、自宅のある栗原市若柳から車で一関市内に通う途中、被災した。12年に妻に誘われジオガイド養成講座を受講。妻は脱落したが「中途半端にしない」と踏ん張った。
 案内する対象は地元の子どもたちが多い。地滑りのイラストなどを準備して現場に臨む。土地にまつわる歴史なども交え、分かりやすく、興味を引くよう工夫を重ねる。
 「地元を学んで愛着を持ってもらいたい。たとえ故郷を離れても、栗原の良さや地震を伝える語り部になってくれるはずです」。全ての市民が案内役を果たせる状況を理想に描く。
 「地質、自然、歴史文化まで、広い知識に太刀打ちできない」と仲間の評価は高い。本人は「いいかげんな性格。いろいろ手を出したいだけ」と笑う。
 自宅から栗駒山の崩落地まで直線距離で約30キロ。「天候次第で近くの橋から崩落地が見えるんですよ」。時にプライベートな話題も織り込む。これもガイドの秘訣(ひけつ)だ。

●重なる思い

<知識と絆の重要性を>
 栗原市花山のそば店経営伊藤広司さん(70)は地震後間もなく、復興を目指す住民団体を仲間と組織した。経験や教訓を地域内外に発信している。
 発足当時は何も分からず右往左往しました。伝承活動の原点は「同じ思いをしてほしくない」との願いです。地震が多い日本では誰もが被災者になり得る。経験は共有すべきです。
 最も伝えたいのは「知識と絆の重要性」。制度の仕組みや行政との交渉の仕方を知っていればよかったと思う場面が多々ありました。地域の輪の大切さは言わずもがな。皆で支え合ったから頑張ってこれました。
 「知恵を出し合い結束すれば道は開ける」。この思いを胸に、災害に強い地域を築き上げてほしいです。

<救助技術を磨く場に>
 一関市萩荘の伊藤徳光さん(31)は京都府からUターンした一昨年、橋の点検などを請け負う会社を起こした。昨年からは震災遺構「旧祭畤大橋」での救助訓練にも取り組み始め、技術の向上に努めている。
 実際に崩落した橋と地上を行き来すると、自然災害の威力を肌で感じることができます。次の大規模災害に備えて救助に携わる人の輪を広げ、互いの技術を磨き合う。内陸地震の負の遺産が、その中心的な場所になることを願います。
 今年の訓練には2日間で延べ50人の消防士らが参加しました。救命士や救助犬がロープによる降下を体験し、見学に大勢の市民が足を運んでくれました。災害を思い出すきっかけになればうれしいです。


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2018年06月20日水曜日


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