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<岩手・宮城内陸地震10年>あの日と歩む(5完)拓く 故郷に根 実らせた夢

果樹の間引き作業をする三浦さん
蘇武和祥さん
村山喜子さん

 死者17人、行方不明者6人を出した2008年の岩手・宮城内陸地震は、14日で発生から丸10年となった。道路などのインフラは復旧し、山あいの集落はかつての姿を取り戻したかに見えるものの、人々の心の復興や地域再生の度合いはまだら模様だ。喪失感と向き合う遺族、産業振興に歯を食いしばる住民、集落の再興を誓う若者。関係者らの現在を見つめ、地域の未来を展望する。

 岩手・宮城内陸地震被災地では過疎、高齢化が深刻さを増す。一方、山あいの暮らしに可能性を感じ、地域に根を張った人々もいる。果樹園経営を始めた青年、栗駒山の魅力を発信するアウトドア用品店の夫妻、Uターンして移住促進に注力する女性。次代を切り拓(ひら)こうと、着実に歩みを進める。

◎栗原市花山 三浦俊輔さん(27)

 家の周りにはコンビニもスーパーもない。でも不便とは思わない。ここには雄大な自然と地域の強い結び付きがある。お金で買えない豊かさがある。
 栗原市花山の三浦俊輔さん(27)は若手の果樹農家だ。2011年に40アールで栽培を始めた。規模拡大を図り、現在は約1.4ヘクタールでリンゴやモモなどを手掛けている。
 果樹栽培は子どもの頃からの夢だった。発災時は高校3年生。宮城県農業大学校(名取市)への進学を目指していたが、自宅は全壊、父が営むそば店も休業に追い込まれた。
 家計が心配だった。進学を諦めかけた時、父が背中を押してくれた。「気にせず勉強してこい」。胸が熱くなった。合格後、必死に勉強した。卒業論文のテーマは「リンゴ農家の経営改善」。夢をつかむための準備を着々と進めた。
 大学校の卒業式があった11年3月、東日本大震災が起きた。姉の嫁ぎ先の東松島市大曲のイチゴ農場が、津波にのまれた。打撃を受けても姉の口から弱音は出ない。「自分も故郷で踏ん張るよ」。ひそかに誓った。
 花山は寒暖差が大きい。人間には厳しくても、果樹栽培にはうってつけの気象条件だ。支えてくれる顧客もいる。「また頼むよ」。何げない一言に力が湧く。
 地元の高齢化率は50%に迫る。20代はほぼいない。地域の行く末への不安がないわけでない。それでも、木や土に触れていると気持ちが落ち着いてくる。
 「果樹は手間を掛けた分だけ応えてくれる。地域づくりも似ていると思う。みんなで頑張れば何とかなる」。そうはにかみ、額の汗を拭った。

●重なる思い

<栗駒登山魅力広める>
 栗原市鶯沢の蘇武和祥さん(36)は仙台からUターンして昨年9月、同市栗駒の商店街の空き店舗にアウトドア用品店を開店した。妻優子さん(36)と店に立つ。
 内陸地震で地元の栗駒山は入山が一時規制されました。故郷の山を強く意識するきっかけでした。栗駒山登山の魅力を知ってもらいたい。開店を思い立った理由の一つです。
 栗駒山には素晴らしい観光資源があります。ただ地震被害の影響もあって、観光客があちこち寄らずに帰ってしまう弱さもあります。
 地元を訪れた人たちが食べたり遊んだり買い物したり。地域の店舗と一緒に、新たな人の流れを生み出していきたいですね。

<集落に若者呼び込む>
 栗原市花山の村山喜子さん(35)は昨春、総務省の地域おこし協力隊の隊員として東京からUターンした。集落の魅力発信に奔走する。
 父が急逝し、母を支えるため戻りました。都会に後ろ髪を引かれた時期もありましたが、今は帰ってきてよかったと思います。
 一度離れたから見える良さがいっぱいあります。景色、食材、人柄…どれも唯一無二。心に留まったものは撮影し、フリーペーパーなどでPRしています。
 発災時は帰省中でした。当時を知る者として、被災集落の活性化にやりがいを感じます。支え合いの精神を受け継ぎつつ、若年層を呼び寄せたいです。(若柳支局・古関一雄、栗原支局・土屋聡史、一関支局・浅井哲朗)


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2018年06月21日木曜日


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