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<君は何しに福島へ?>原発風評を越えて 若い世代の移住、震災前を上回る

昨年8月オープンの「溢れる家」で、アクセサリーなどを並べる佐々木さん夫婦=福島県天栄村

 原発、放射能、住民避難…。福島県につきまとう負のイメージを払拭(ふっしょく)するように、都会から移住する人が増えている。東日本大震災前よりも多いというデータもある。特に目立つのが子育て中や働き盛りといった若い世代。移住者に聞いた。君は何しに福島へ?(福島総局・神田一道)

 「東京では周囲を気にしながらの生活だった。福島で自分らしさを取り戻せた」。人口5000の天栄村。会社経営佐々木貞治さん(37)と綾さん(43)夫妻は、村の暮らしに満足している。
 首都圏出身。震災ボランティアで村を訪れた2015年11月、コメのおいしさにほれ込んだ。息子2人と昨春移住。都内の仕事拠点に時々通い、貞治さんは映像制作やチラシ作り、綾さんは保険業の仕事をする。
 昨年8月には村内に予約制カフェ・雑貨店「溢(あふ)れる家」を開店。東京で仕入れたアクセサリーなどを並べている。
 生活環境だけでなく発想も変わった。「収入は減ったが家賃が安いので十分生活できる。子どもと向き合うゆとりもできた」と貞治さん。休日に家族で釣りやバーベキューを楽しむ。
 東京電力福島第1原発事故の影響を心配する声も気にしない。「自然豊かで、最適の子育て環境」と綾さん。貞治さんも「自然の中で過ごした経験を胸に成長してほしい」と願う。
 自治体の支援を受けたり、就職したりした福島への転入者は14〜16年の3年間で215人。震災前07〜09年の147人を上回る。
 20〜30代が目立つ。14〜16年は約50%に上り、07〜09年の約20%から飛躍的に伸びた。復興支援目的や国の「地域おこし協力隊」となった例などさまざまだ。
 福島の魅力を再認識してUターンする若者もいる。
 臼井翼さん(29)は昨年9月、郡山市にIT会社「HATAFULL(ハタフル)」を設立、首都圏から移り住んだ。企業のホームページ(HP)制作や、HPを通じた福島の観光スポットの発信を手掛ける。
 会津若松市出身。20歳で上京した。原発事故の影響を過剰に不安視する声に、古里を傷つけられる思いがした。「ウェブを通して福島の魅力を多くの人に伝えたい」と言う。
 県は震災前、団塊世代を狙った誘致策を展開していたが方針を転換。本年度は30歳前後の県出身者に帰郷を促す「同窓会」を企画する。県地域振興課は「人口減は大きな課題。移住した若者が地域の担い手になってほしい」と期待する。


2018年06月24日日曜日


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