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<東北の本棚>国家の棄民政策と闘う

◎フクシマ・抵抗者たちの近現代史 柴田哲雄 著

 平田良衛、岩本忠夫、半谷清寿、鈴木安蔵の4人を取り上げた。農民運動家、原発推進派町長、実業家、憲法学者と活動の分野は異なるが、生まれはいずれも福島県浜通りで、福島第1原発事故の被災地と重なる。共通項は「国家の棄民政策と闘った人々」と言えようか。
 平田良衛は南相馬市小高区生まれ。共産党に入り治安維持法で逮捕されるが、非転向を貫く。しかし「党の方針は農民の現状から遊離している」と戦後は開拓団を指導、貧しい農村にあって自らの理想を実践しようとした。
 岩本忠夫は双葉町で酒屋を営みながら、町長を5期務めた。初めは社会党に入り、地域で反原発運動を主導。しかし、雇用を生み出す代案が見いだせない。町財政は悪化するばかりで、やがて原発増設運動に奔走する。
 半谷清寿は小高区を中心に絹織物業など商工業の振興を目指した。「東北はいつまでも半植民地の地位にあってはならない」を信念に、反中央、自治権の確立を訴えた。
 鈴木安蔵も小高区の生まれ。戦前、治安維持法で逮捕される。自由民権運動高揚期の憲法草案に触れるなどして憲法学者の道を歩む。戦後、鈴木のまとめた憲法草案がGHQに提出され、これが現憲法の下敷きになったとされる。
 4人は自らの理想を求め、苦闘し、激動の時代を生き抜いた。本書では「もし彼らが生きていたら、現代の原発問題をどう考えるか」を推論している。平田は、政府や電力会社に「粘り強く抵抗したであろう」と言う。岩本の苦悩からこそ、原発問題の難しさを学ぶべきであり、水力発電にも関わった半谷は当時から電気の「地産地消」を訴えていたと言う。鈴木の民主的な憲法草案こそ国家の棄民政策との闘いの結実だった、と解釈するのが妥当だろう。
 著者は1969年、名古屋市生まれ。愛知学院大准教授。専攻は近現代史。
 彩流社03(3234)5931=2376円。


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2018年06月24日日曜日


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