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<杜の都のチャレン人>未来切り開く力応援

「底上げ」主催のイベントで若者と話す矢部さん(中央)。若者が行動を起こすためのサポートを続ける=仙台市青葉区

◎地域リーダーづくりに取り組む 矢部寛明さん(34)

 大学を卒業する直前に東日本大震災が発生。ボランティアで宮城県気仙沼市に入った。関東出身だが、それ以来、心はいつも東北にある。
 気仙沼は、震災前に自転車旅行で訪れ、温かい人情に触れた場所だった。ボランティアの仲間たちと「底上げ」をつくり、避難所運営や子どもたちへの学習支援などを続けながら、視線は早くから、復興の先へと向けていた。
 「大人たちが生活再建に忙しい中、『どうせ高校を出たら仙台や東京へ行き、戻らない。気仙沼なんてどうでもいい』という子どもたちの態度が気になった。気仙沼を良くするためには、そんな気持ちを変えてあげないといけない」
 「恋人」という言葉を広めた同市出身の歌人、落合直文に注目し、高校生による「恋人発祥の地・気仙沼」のPRを後押ししたり、大学生がとことん自分と向き合う合宿の場をつくったり−。若者が動きだす仕掛けを、手を変え品を変えて繰り出し、7年間で延べ1000人を超す若者と関わった。
 「東北各地から若者が集まる仙台でも、地域のリーダーづくりに取り組みたい」と1年ほど前、仙台に拠点を移した。今春から東北芸術工科大(山形市)の講師として地域づくりなどに関する講座を受け持つ一方、宮城大大学院事業構想学研究科(宮城県大和町)に入学し、地域で若者が行動を起こすためのプログラムの効果を研究。底上げの本拠地、気仙沼にも随時赴くという多忙な日々を送っている。
 無尽蔵に見えるエネルギーの源は、震災直後に被災地で感じた無力感だという。がれきの山を前に「何もできず悔しかった。それを解消したい。エゴですよ」。自分に言い聞かせるように口にする。
 震災直後に出会った高校生たちはもう、社会人になった。進学などで一度離れた気仙沼に戻り、地元振興を志す者もいる。「小さな一歩。ゼロではない」。成果をかみしめ、また走りだす。(也)

[やべ・ひろあき]83年埼玉県ふじみ野市生まれ。早稲田大文化構想学部卒。12年5月にNPO法人「底上げ」を設立し、代表理事を務める。底上げは現在、宮城県南三陸町でも活動する。仙台市宮城野区在住。


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2018年06月30日土曜日


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