宮城のニュース

<森の中の匠たち>秋保工芸の里30年(中)結ぶ/多様な作家 観光に厚み

創作活動が盛んな仙台市太白区秋保町であったクラフトフェア「手ん店」。出店者も来場者も年々増えている=4月中旬

 仙台市太白区秋保町にある「秋保工芸の里」が開設から30周年を迎えた。自宅を兼ねた九つの工房に匠(たくみ)が暮らしながら、伝統の技を守り、個性豊かな創作の魅力を発信し続ける。長い年月は、来場客の減少や職人の高齢化といった悩みももたらした。30年の足跡と課題を探った。
(報道部・田柳暁)

 山々が迫る仙台市太白区秋保町の谷あいに4月中旬、家族連れや工芸ファンが詰め掛けた。お目当ては、木の家ロッジ村であったクラフトフェア「手(て)ん店(てん)」。木工や陶器、ガラスの工房が勢ぞろいした、市内最大級の手工芸イベントだ。

<興味持つ機会に>
 秋保に工房を構える職人たちのグループ「手しごとAKIU」が企画した。今年で3回目。点在する作り手や店をつなぎ、秋保とほかの地域、作り手と買い手を結びつけたいとの願いを、イベント名に込めた。
 グループ代表で、秋保工芸の里で仙台箪笥(たんす)を作る熊野彰さん(60)は「手仕事の魅力を発信して秋保を活性化したい。小さい子どもが手業に興味を持つ機会にもなる」と説明する。
 30年前の工芸の里の完成をきっかけに、秋保には職人や作家が集まり始めた。秋保を南北に貫く国道457号沿いには、陶芸家やガラス職人の工房が立ち並び「ゆめの森」と呼ばれる創作空間を形作った。
 作家同士の交流は2009年、より活発になる。みやぎ仙台商工会(泉区)の観光と農商工の連携プロジェクトが契機となった。

<客の反応に刺激>
 「山里の四季」をテーマに、秋保温泉の老舗旅館で県産食材を使った料理を振る舞うツアー。彩り豊かな料理を盛り付けた器や小鉢は、職人たちが制作した。食の喜びや作品への関心など、客の反応を目の当たりにして、作家の創作意欲は大いに刺激された。
 10年に秋保の工芸品を集めた秋保手しごと館を木の家ロッジ村に開設。11年には工芸、そば打ちの職人らを加え「手しごとAKIU」を立ち上げた。
 メンバーの一人で作陶家の大場拓俊さん(60)は「多様な顔ぶれが集まれば秋保の観光地としての厚みが増す。好循環が生まれている」と手応えを語る。

<新たなコラボも>
 新たな連携も生まれた。工芸の里がある湯元地区に15年12月、県内唯一のワイン醸造所、仙台秋保醸造所がオープン。熊野さんは漆塗りのワインスタンド、ガラス職人はグラスを作るなど、コラボレーションの幅を広げる。
 湯元地区では、古民家を再生し、地場産品を使った料理を味わったり、地域文化に触れたりできる観光交流拠点の整備が進む。熊野さんは「食器や調度品で関わりたい」と期待する。
 拠点を運営する観光まちづくり会社、アキウツーリズムファクトリー社長の千葉大貴さん(41)は「秋保は職人が多く、創造性が豊かな環境がある。地元の魅力を高め、流出している若者を定着させる機運づくりが重要だ」と提案する。


関連ページ: 宮城 社会

2018年07月06日金曜日


先頭に戻る