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<森の中の匠たち>秋保工芸の里30年(下)継ぐ/若い職人 呼び込む手も

最も若い職人の敬さん。真剣な表情で茶盆作りに打ち込む=5月中旬、仙台市太白区の秋保工芸の里

 仙台市太白区秋保町にある「秋保工芸の里」が開設から30周年を迎えた。自宅を兼ねた九つの工房に匠(たくみ)が暮らしながら、伝統の技を守り、個性豊かな創作の魅力を発信し続ける。長い年月は、来場客の減少や職人の高齢化といった悩みももたらした。30年の足跡と課題を探った。
(報道部・田柳暁)

 ろくろに取り付けた木板に専用の工具を当て、慎重に削っていく。木くずが勢いよく飛び散る。

<修業積んで戻る>
 仙台市太白区秋保町の秋保工芸の里にある玩愚(がんぐ)庵こけし屋の木工職人鈴木敬さんは24歳。九つある工房で一番の若手だ。職人の父明さん(57)の次男で、工芸の里で生まれ育った。
 4年の修業の後、2017年3月に地元に戻った。地元の高校を卒業後、石川県立の木工技術研修所に入所。伝統工芸の山中漆器で知られる、ひき物の産地で木地師のいろはを学び、現地の工房で修業を重ねた。
 「山中漆器は分業制が基本。削った茶わんの縁の厚さが少し違うだけで塗り師に突き返された。プロの厳しさを学んだ」
 工芸の里では茶盆や茶わんを制作。出来上がると会員制交流サイト(SNS)で情報発信する。「手業を受け継ぐプレッシャーはあまりない。伝統を守りつつ自分なりの創作を追求したい」と表情を引き締める。

<後継者確保 課題>
 工芸の里ができて30年。職人たちの平均年齢は60歳を上回り、代替わりする工房が多くなっている。
 頭に「乙」の字を描くのが特徴の秋保こけしを手掛ける佐藤こけし屋では昨年8月、75歳だった佐藤円夫(かずお)さんが死去。長男の武直さん(43)が受け継いだ。
 武直さんは「2人分の制作はできないが、20年続けてきたこけし作りをこれからも丁寧にやっていく」と決意を新たにする。
 工芸の里ではこれまで、職人の子どもが跡を継ぐケースが多かった。しかし、ある職人が「子どもがいなかったり、いても会社勤めをしていたりする工房もある」と話すように、後継者の確保は大きな課題だ。
 最年少職人、敬さんの父明さんは秋保工芸の里事業組合の組合長。「自分の子どもではなく、弟子が工房を継ぐことも考えないといけない時代」と指摘する。
 職人の高齢化について「敷地内には工房を建てられる遊休地があり、若い職人を呼び込んで若返りや活性化を図る必要もあるのではないか」と悩む。

<来客増 飲食が鍵>
 工芸の里に構想段階から関わる東北工大ライフデザイン学部の菊地良覚教授(地域デザイン)は「人が生きる上で必要な技と知恵を持つ人たちが集まっているのが工芸の里。秋保地区の農業や林業を巻き込んだ地域活性の拠点となり得る場所だ」と指摘する。
 その上で「飲食関係の職人や工房がないのが弱点の一つ。新たにできれば来場客の滞在時間の拡大が期待でき、若い世代を呼び込めば工芸の里に興味を持ってもらえる」と提案する。


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2018年07月07日土曜日


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