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「森は海の恋人」運動30年 畠山重篤さんに聞く(下)生がき味わえる環境/人間の営み輪の中に

自慢のカキをむく畠山さん=気仙沼市唐桑町

 気仙沼湾に注ぐ大川上流の岩手県一関市室根町に広葉樹を植え、海を豊かにする「森は海の恋人」運動。1989年に始まり、今年で30年目を迎えた。落ち葉が作る栄養分が川を通じて海へ流れ込み、カキの栄養分となることに着目した活動は国内外から広く注目を集めてきた。中心的役割を担う畠山重篤さん(74)に、30年の歩みと展望を語ってもらった。

 「人類が生き延びる道は明白だ。生がきを食べられる海と共存することである」。植樹活動を30年続けてきた結論です。
 この言葉を思い付いたのは米ニューヨーク。2012年、国連機関から森林保護に貢献した民間人を表彰する「フォレストヒーローズ」に選ばれ、表彰式のため訪れたのでした。
 渡米する直前に「牡蠣(かき)と紐育(ニューヨーク)」(マーク・カーランスキー著)という本を読みました。驚きました。18世紀中頃まで、世界最大のカキの産地はニューヨークだったというんですから。
 しかし、汚物を川に垂れ流したためにカキは生育できなくなりました。当地のオイスターバーに行きましたが、ニューヨーク湾で取れたカキは一個もありません。ニューヨーカーも、ハドソン川流域に木を植えないといけないのです。


◎山までを俯瞰

 人間が意識を変えないことには、カキを生で食えないわけです。だから教育は重要です。
 植樹を始めた直後から、子どもたちを招きプランクトン観察などの体験学習をさせています。地元のほか開成高、灘高からも来ます。「森は海の恋人」の活動は小学社会、中学国語、高校英語の教科書にも取り上げてもらいました。京大では「森・里・海連環学」という学問も生まれた。
 それまで、海から山まで俯瞰(ふかん)して見られる学問はなかった。自然科学だけなら「森川海」でしょうが、川の流域には人間がいるから「里」。これがミソです。

◎コメもノリも

 日本には3万5000もの川があり、多くのダムがある。ダム底には森の養分や砂が堆積しています。これを海まで運びたい。技術を開発すべきです。
 川の流域が自然に近づけば海が豊かになり、ひいてはコメの消費が増えるのです。どういうことかって?。
 川が流れ込む汽水域は、すしだねの宝庫。川の環境が良くなれば魚がたくさん取れて、すしが安くなりコメの消費が増える。
 ノリもそう。おいしいノリはもともと汽水域で採れます。黒くはないが香りがあって軟らかい。これでコンビニのおにぎりをくるむ。うまいです。売れます。
 日本の海岸は、どこも砂浜の浸食が進んでいて、川からの砂の供給も課題です。津波対策にもなるし、アサリも採れる。アサリが安くなれば、みそ汁を作る機会が増え、これまたコメの消費が増えると。
 良質な海産物が安くなると外国人観光客が喜ぶ。生がきが食べられる海と共存できる国になれば、観光面でも利点が出てきます。

◎創業100年まで

 カキを食べているから元気ですよ。私の源泉はカキです。家族は妻と子どもと孫と合わせて17人。跡継ぎ孫も高校生になりました。4代目になります。うちがカキ養殖を始めたのが昭和22(1947)年。創業100年まであと30年か。10月で75歳。そこまで生きられるかな。ちょっと無理かな。カキで何とか体を持たせましょうかね。


2018年07月07日土曜日


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