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<次世代型放射光施設>世界と技術力競う礎に/理研・放射光科学研究センター長・石川哲也氏に聞く

精密機器が並ぶスプリング8の内部
石川哲也氏

 世界最高性能の大型放射光施設のスプリング8は稼働から20年を迎え、用途は学術研究から産業利用に広がる。運営する理化学研究所放射光科学研究センターの石川哲也センター長に、次世代型放射光施設が東北にできる意義を聞いた。(聞き手は報道部・高橋鉄男)

 −次世代型の必要性は。
 「スプリング8は1日当たり平均で約300人の研究者が訪れ、世界初の光合成のタンパク質構造解析や新たな創薬、ゴム、食品の開発など世界の第一線で戦ってきた。利用希望が殺到し現在、受け入れは限界に近い」
 「世界では、スプリング8より一歩進んだ施設の建設競争が進んでいる。日本の科学技術に次世代型は不可欠になっていた。東日本大震災以前から求められていた構想がようやく実る」

 −西のスプリング8、東の次世代型の位置付けはどうなるのか。
 「互いに補完し、進化できる存在になる。20年がたったスプリング8はレベルアップのため1年休止して改修したい。次世代型が動いてくれれば産業界も利用を止めずに済む」
 「次世代型は『軟エックス線』で物質の機能を分析し、光がスプリング8の約100倍明るい。一方、スプリング8の『硬エックス線』は物質の構造を調べるのに強みがあるが、次世代型も性能は代替できる。東西で地理的なリスク分散も可能だ」

 −中小企業の利用は。
 「兵庫県専用のビームラインで菓子のパッケージや酒米が研究された。先端技術が必要な企業は大小を問わずにある。中小企業には敷居が高いが、行政が『できる、できない』を助言したり、学術に橋渡したりする支援をしてほしい」

 −東北の産学官は研究開発拠点の集積を掲げる。
 「スプリング8のように小さなブランチ(出先)はできると思うが、企業には拠点を設ける余力はないのではないか。ただ未知の分野の融合で、新たなものが生まれる可能性はかなりある。東北大など大学が施設を使い倒して新しい結果をいち早く示し、企業が追随する形ができればいい」

 −放射光施設の使命は。
 「日本の技術力全体が低迷し、世界のスピードについていけずにいる。われわれが目指すのは、世界と戦う『日本株式会社』の分析部門。スプリング8と東北の次世代型施設が二人三脚となり、日本の科学技術を支えていけると確信している」

[いしかわ・てつや]東大大学院工学研究科博士課程修了。東大工学部助教授、理化学研究所主任研究員などを経て2006年から現職。専門はエックス線光学。15〜17年日本放射光学会長。64歳。静岡県出身。


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2018年07月08日日曜日


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