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<汚染廃>堆肥化目指す栗原市、事業へ議論大詰め 市政懇談会の意見踏まえ可否判断へ

 東京電力福島第1原発事故で生じた国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染廃棄物の処理を巡り、宮城県栗原市で議論が大詰めを迎えている。市は独自に行った実験結果を基に、他自治体で例がない堆肥化での処分を目指す。一方で環境への影響を不安視する声も出ており、市は10〜26日に市内10地区で開く市政懇談会での意見を踏まえ、事業の可否を判断する。

 市は原発事故後、環境への影響や既存の焼却施設の処理能力不足から、国が勧める焼却以外の手法を検討。14年10月、堆肥化の研究実績がある東大大学院農学生命科学研究科付属牧場(茨城県)を訪ね、事業化にかじを切り始めた。
 庁内での協議を経て16年、堆肥の試験製造と、完成した堆肥を使った農産物の生育実験を同市金成の市有地で実施。市によると施設周辺に放射性物質は飛散せず、堆肥で育てた植物に同物質は移行しなかった。
 翌17年には焼却や堆肥化、すき込みなどの手法を比べる調査事業に着手した。焼却は「放射性物質が付着したフィルターの処分に課題がある」、すき込みは「土壌への還元可能基準(400ベクレル以下)を超える牧草を処理できない」などとして、堆肥化が最も安全で効率的と結論付けた。
 市は環境省と事業費について協議。助成のめどが立った今年6月、堆肥化方針を市議会調査特別委員会で正式に表明した。施設候補地もこの場で明らかにし、未利用地の市営上田山(かみたやま)牧野(同市栗駒)とした。堆肥は畜産農家に利用を呼び掛ける考えを示した。
 だが5日に候補地周辺で開いた住民説明会で不満が噴出。(1)牧野は上流の水源地にあり、地下水に影響が出る恐れがある(2)農産物の風評被害に拍車が掛かる(3)前例がない試みで、将来への影響が見通せない−との声が出た。
 市は(1)高温発酵で製造する堆肥は乾燥して水が出にくく、排水処理も徹底する(2)空間線量のモニタリングと数値公表で風評を防ぐ(3)生育した植物の放射性物質濃度は随時公表し、不安の払拭(ふっしょく)に努める−などと説明し、理解を求めた。
 「建設場所の提案が唐突だ」との思いが周辺住民にはある。これに対し、市は「原発事故から7年たち、牧草を抱える農家は大変な状況にある。事業を前に進めたい」と強調する。
 説明会に参加した市議は「堆肥化が不可となれば、議論は一からやり直し。他自治体が処理を進める中、現実的でない」としつつ「6月の方針表明は性急で、施設周辺住民への配慮が足りなかった。懇談会では、丁寧に説明する姿勢が重要だ」と指摘した。

[栗原市の汚染廃棄物の堆肥化事業]対象は市内の国基準以下の廃棄物(計約3550トン)のうち、農家が自宅の軒先などで保管している汚染牧草約2550トン。牧草に大量の微生物資材を混ぜ、約90日間の高温発酵を施して製造する。完成した堆肥の量は元の牧草の約3.5倍となる。放射性物質の濃度は土壌への還元可能基準値(400ベクレル以下)を下回る300ベクレル以下とする。


2018年07月10日火曜日


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