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<仙台圏域これくしょん>(1)ビンテージサックス/ざらついた渋い音 魅力

事務所に展示したサックスの手入れをする熊谷さん。気鋭のジャズプレーヤーにしてコレクターだ
収集品で最も古いアドルフ社の1907年製。修理中のため、音を出すことはできない
リンカーン大統領の肖像が手彫りされたコーン社の25〜26年製。全体に細かな彫刻が施され、美術品のよう

 モノを集めることは楽しい。誰かが集めたモノを眺めるのも、また楽しい。珍品希少品、奇書、秘宝。仙台圏の文化、芸能、風俗など多彩なコレクションを訪ねる。(生活文化部・阿曽恵)

◎プロ奏者 熊谷駿さん

 仙台市太白区八木山本町の住宅街。「Bop Wind(バップウインド)」と書かれた扉を開けると、そこは思いがけない楽器の殿堂だった。
 棚や床に並ぶアルトサックスが、照明の下で鈍い輝きを放つ。「全て米国製のビンテージです。70本ほどあります」。ジャズサックス奏者として国内外で活躍する熊谷駿さん(26)が、自宅に併設した音楽事務所を案内してくれた。
 サックスは1840年代にベルギーの楽器製作家アドルフ・サックスが考案した。そのアドルフの名を冠したメーカーの1907年製が、コレクションで最も古いという。
 ビンテージサックスは世界中のプロ奏者に愛され、中でもセルマー社の「マーク6」は人気モデル。刻印されたシリアル番号が14万番台になる66〜67年製はジャズ演奏に特に向いているとされ、100万円以上の値が付くこともある。
 熊谷さんは10歳でサックスを習い始め、米バークリー音大を経てニューイングランド音楽院修士課程に在籍する俊英。40年代に成立したジャズの一スタイル、ビバップの研究と演奏に打ち込む。相棒に選んだのはもちろん「マーク6」だ。
 「今の楽器は操作性や鳴らしやすさは優れているが、誰が吹いても同じ音になる。当時の演奏のような、ざらついた渋いサウンドはビンテージならでは」と強調する。
 コレクションはメーカーごとに展示され、セルマーの26本の他にキング、マーティン、ブシャーなど各社を網羅。尊敬するビバップの創始者、チャーリー・パーカーが愛用した機種の一つであるコーン社の「6M」モデルも鎮座している。
 収集はジャズ好きの父が先行していた。今では父子が協力して米国の楽器店や通販サイトで買い集める。秘蔵する気はなく「楽器は鳴らしてなんぼ。手に取って試奏してほしい」。事務所ではレッスンやライブも行う。「ジャズミュージアムとして八木山新名所になれたらいい」と夢を描く。


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2018年07月10日火曜日


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