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<頓挫 一関ごみ焼却施設>(上)振興という方便/行政の矛盾見透かす

勝部市長の立地断念表明に笑顔を浮かべる狐禅寺地区の住民=6月21日、一関市役所

 一関市と岩手県平泉町でつくる一関地区広域行政組合(管理者・勝部修一関市長)の新ごみ焼却施設建設計画が頓挫した。足かけ4年に及ぶ交渉はどこで手順を誤ったのか。建設候補地に擬せられた一関市狐禅寺地区から経過をたどり、教訓を探る。(一関支局・浅井哲朗)

◎覚書ほご 狐禅寺住民反発

 「住民合意を無視して前には進めない。方針を変更したい」
 6月21日、市議が居並ぶ市庁舎全員協議会室で執行部席の勝部修市長が、こわばった表情で計画断念を表明した。傍聴席では反対闘争を繰り広げてきた狐禅寺地区の住民が見守った。
 狐禅寺地区は一関市のほぼ中央に位置する。のどかな丘陵が広がる農村地帯であると同時に、半世紀にわたって焼却施設が立地し続ける地区だ。地域住民には「迷惑施設」に対する不満がくすぶり続けていた。
 転機が訪れたのは2000年だった。大規模改修による焼却施設の延命を認めるのと引き換えに、運営主体の一関地方衛生組合(当時)と覚書の締結にこぎ着ける。
 住民団体「狐禅寺地区生活環境対策協議会」の会長と組合管理者の浅井東兵衛市長(当時)が交わした覚書は「ごみ焼却施設は狐禅寺地区に建設しない」と明記。焼却施設の建て替えは行われない見通しとなった。
 2009年に就任した勝部市長は老朽化した焼却施設の後継整備に乗り出す。年間1億〜2億円の維持費負担が重くのしかかっていた。
 そして14年、地域振興策とセットで新焼却施設建設を持ちかけた先はまたも狐禅寺地区だった。勝部市長は、覚書と同時に交わされた公害防止協定をより上位の約束事と解釈し、その中にある「第7条『施設の新増設時は事前に協議する』」との一文に着目した。
 「協定に基づいて一番に声を掛けた」と勝部市長は狐禅寺地区への「配慮」を強調。最新鋭焼却炉の安全性を説明し、他県施設の見学ツアーを開催したり先進地をDVDで紹介するなどマイナスイメージの払拭(ふっしょく)に努めた。
 勝部市長には超大型加速器「国際リニアコライダー」の拠点と連携する腹案もあった。「狐禅寺はまちづくりの中心になる。振興策への理解を進めた上で一緒に覚書を乗り越えたい」と一本道を突き進んだ。
 しかし勝部市長の「覚書を乗り越える」は、住民にとっては迷惑施設を固定化するための「方便」にしか聞こえなかった。覚書に従えば候補地にすらなり得ないはずの自分たちのふるさとが、どうして唯一の候補地になるのか。
 地元説明会は終始「最初から狐禅寺に絞る理由が分からない」と反発の声が渦巻いた。
 「あえて複数の候補地を選定せず、既に施設が立地している地区の説得に精力を集中する」と、最短コースを選んだはずの新ごみ焼却施設建設計画。時間だけを食いつぶし、ついに頓挫した。

[メモ]一関市狐禅寺地区では1969年に一般ごみ焼却施設が運転開始した。現在は81年に建て替えられた「一関清掃センター」が稼働中。東日本大震災後の岩手県ごみ処理広域化計画の一部運用変更に伴い、一関地区広域行政組合は後継施設を整備する必要性が生じた。


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2018年07月10日火曜日


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