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<頓挫 一関ごみ焼却施設>(中)極まる行政不信/汚染廃問題で深い溝

放射線への懸念を訴える住民たち=3月28日、一関市狐禅寺地区の一関清掃センター

 一関市と岩手県平泉町でつくる一関地区広域行政組合(管理者・勝部修一関市長)の新ごみ焼却施設建設計画が頓挫した。足かけ4年に及ぶ交渉はどこで手順を誤ったのか。建設候補地に擬せられた一関市狐禅寺地区から経過をたどり、教訓を探る。(一関支局・浅井哲朗)

◎信頼築けず推進派も不満

 一関地区広域行政組合(管理者・勝部修一関市長)が一関市狐禅寺地区に受け入れを求めたのは、一般ごみの焼却施設だけではなかった。
 勝部市長は2014年、焼却灰を埋め立てる最終処分場、放射性セシウムを含む廃棄物の仮設焼却炉を加えた「3点セット」を提示した。東京電力福島第1原発事故で一関地方は、岩手県最大の放射線被害地域だった。
 「地区内にごみ焼却場を建てないと決めた覚書を破る上、原発事故のごみまで押し付けるのか」
 コメや果樹を栽培する地元農家の間に風評被害への懸念が広がり、勝部市長は16〜17年、最終処分場と仮設焼却炉の立地案を相次いで撤回した。
 しかし、一度芽生えた不信の念は容易に消えない。住民説明会では、こんなやりとりがあった。
 「国は仮設焼却炉を造らないと言い切れるのか」
 「国が造ると言っても地元の考えを通す。造らない」
 環境省との継続協議で結論が出ていないにもかかわらず、市幹部は空手形を切って住民たちをなだめた。
 16年に市東部のごみ焼却施設「大東清掃センター」で生じたトラブルも、放射線不安に拍車をかけた。センターで続けていたセシウムを含む牧草の混焼に住民団体が「周知不足」と抗議し、焼却作業が1カ月間停止する騒ぎになった。
 行政の体質を「知らしむべからず」と見て取った狐禅寺地区に「新施設に放射性のごみが持ち込まれる」とのうわさが広がった。もはや行政に住民の疑心暗鬼を解消するすべはなかった。
 一方、狐禅寺地区では、強硬な反対運動と一線を画して新施設建設に賛同する動きが起きていた。
 16年6月、地区内の地権者8人が計13ヘクタールの農地提供を表明。一関市議会も推進決議で計画を後押しした。
 ようやく行政組合と地元住民でつくる協議会の交渉が本格化すると思えた直後、住民組織の内部崩壊が表面化する。役員人事を巡る内紛で今年4月、協議会の計画反対派が推進派を提訴したのだ。
 訴えは後に却下されるが、推進派は勢いを失って協議離脱を表明。話し合いの足掛かりをなくして勝部市長は計画撤回に追い込まれた。
 「もはや組織の体をなしておらず、話し合いの進展を見込めなかった」。協議会役員の一人はこう振り返る。推進派の役員でさえ「信頼関係を築く行政の姿勢は物足りなかった」と疑問を呈する。
 計画提示から4年で残ったのは、住民の行政不信だけだった。



[メモ]大東清掃センターでは2012〜13年、国の基準である1キロ当たり8000ベクレル超の放射性セシウムを含む牧草1200トンを混焼する実証試験を実施。14年には基準以下の牧草約4900トンの混焼が始まり、18年度中に終了する見込み。


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2018年07月11日水曜日


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