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<頓挫 一関ごみ焼却施設>(下)深刻な住民分断/地域に傷 険しい再生

住民対立を物語る反対運動の看板。7月初旬には全て撤去された=一関市狐禅寺地区

 一関市と岩手県平泉町でつくる一関地区広域行政組合(管理者・勝部修一関市長)の新ごみ焼却施設建設計画が頓挫した。足かけ4年に及ぶ交渉はどこで手順を誤ったのか。建設候補地に擬せられた一関市狐禅寺地区から経過をたどり、教訓を探る。(一関支局・浅井哲朗)

◎行政撤回の計画混乱残す

 一関地区広域行政組合(管理者・勝部修一関市長)と住民団体「狐禅寺地区生活環境対策協議会」による最後の会合は粛々と進んだ。
 狐禅寺地区の一関清掃センター会議室で9日夜、勝部市長は新たな一般ごみ焼却施設建設計画の白紙撤回を伝えた。
 建設推進と反対の立場に分かれた15人の協議会役員たち。お互い目を合わせないまま、40分で会場を後にした。
 新施設建設への賛否で同級生や親類が誹謗(ひぼう)中傷を繰り返した4年間。両者は今「あんなに結束していた地区住民がばらばらになってしまった」と同じ思いを抱えている。
 「お前なんかいとこでも何でもねえ」。話し合いの席で親戚同士の役員がにらみ合うなど、協議会の雰囲気は次第に殺伐としていった。反対派が集団で家々を回って説得工作を展開し、推進派は「威圧的だ」と反発した。
 半世紀近く続いた地区民運動会は昨年、開催が見送られた。市民センターの管理などを担う地域協働体も、市内34地区で唯一未整備のまま取り残された。
 「双方を導くスーパーマンでも現れない限り、関係修復は難しい」。計画推進の立場を取った協議会役員の千葉裕さん(69)は、今後の融和に悲観的だ。
 新施設に農地提供の意思を示した地権者の一人も「農業の不透明な将来を考えての選択が、なぜ分からないのか」と反対派への怒りが収まらない。
 反対派は約2400人分の署名簿提出やデモ行進を繰り広げた。協議会の役員選出に協力を拒否し推進派を提訴するなど、かたくなだった側面も否めない。
 反対運動を続けた協議会役員の高橋佐悦さん(70)は「(地区内にごみ焼却施設を建設しないとした)覚書を守るため、われわれも多くの犠牲を払った。それを反社会的とされるのは残念だ」とうつむいた。
 勝部市長の撤回表明から程なく、反対派は建設反対を訴えるのぼり旗や看板を一斉撤去した。「全てを信用できる状況ではないが、将来のために」と高橋さんは語る。
 「行政の進め方に問題はなかった」との認識を示す勝部市長。「(反対派の)民主的ではないやり方に左右されず、平穏に議論したかった」と最後は反対運動への恨み節で締めくくった。
 地域振興を図るとした新施設建設計画が残したのは、住民の深刻な分断だった。これを反対運動のわがままと片付けてしまえば、次の建設候補地でも新たな混乱が繰り返される。

[メモ]一関地区広域行政組合は狐禅寺地区に、ごみ焼却の余熱を活用する園芸ハウスや多目的施設の建設を地域振興策として提示。農作物直売所やレストランも併設し、周辺道路整備なども含めて総額100億円以上の事業を見込んでいた。


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2018年07月12日木曜日


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