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<洋上救急>波高シ 増える出動、増えぬ医師 協力体制の拡充が課題

昨年6月に金華山沖約480キロの太平洋上で発生した傷病人への治療の様子(海上保安庁提供)

 洋上の傷病人の元へ医師らが海上保安庁などの航空機で直接出向き、手当てをしながら搬送する洋上救急制度の利用が近年増えている。認知度の向上などで需要が高まる一方、東北地方では特定の医療機関や医師の負担が大きく、協力者をどう拡大していくかが課題となっている。

 洋上救急の出動件数は年度によってばらつきがあるが、2015年度の15件から16年度は26件、17年度は29件と増加傾向にある。第2管区海上保安本部(塩釜市)管内も15年度の0件から16、17年度は各3件と増加の兆しを見せる。
 制度を運営する公益社団法人日本水難救済会(東京)によると、医師を派遣できる協力医療機関は全国に147あるが、このうち東北地方は9にとどまる。いずれも宮城県など太平洋側にあり、日本海で傷病人が発生した場合、東北の太平洋側や北海道、新潟県から医師を派遣してもらうケースもあるという。
 東北地方に協力医療機関が少ない理由を同会は「日本海側に海保の航空基地がなく、医療機関数も少ないため」と説明。今後、日本海側の協力医療機関の発掘に努める意向を示す。
 同会は洋上救助の円滑化のため毎年、全国10カ所で訓練を実施している。ヘリコプターで持ち運べる機材が限られる上に搬送時の揺れも大きく、慣れる必要があるためだ。
 2管本部は6月19日、石巻市の金華山沖約510キロで5月、中国漁船内でけがをした乗組員を救助した仙台医療センター(仙台市宮城野区)の医師斉藤壮矢さん(28)と看護師新妻香織さん(27)に感謝状を贈った。
 洋上救急で出動した2人はヘリで現場海域の巡視船に移り、漁船から運ばれてきた患者を治療した。昨年8月の訓練に初参加した新妻さんは「こんなに早く出動機会があると思わなかったが、訓練でも使用したヘリだったので落ち着いて対応できた」と振り返った。
 2管本部管内では、これまで153件の出動があった。担当者は「事案ごとに状況が違うため、臨機応変の対応が重要だ」と話す。

[洋上救急制度]洋上の船舶で緊急治療が必要な傷病人が発生した場合、医師や看護師がヘリコプターなどの航空機で現場海域に向かい、治療しながら陸上の病院へ搬送するシステム。搬送と治療が並行することで、後遺症のリスクが減るという。1982年に宮城県の医師がボランティアで始めたのを機に全国で広まり、85年に現行の形になった。これまでに880件、913人を救助した。


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2018年07月15日日曜日


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