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<プルトニウムの行方>再処理の減速 不可避

鈴木達治郎(すずき・たつじろう)東大で博士号(原子力工学)。2010年1月〜14年3月、原子力委員会委員長代理を務めた。15年4月から長崎大核兵器廃絶研究センター長。67歳。大阪府出身。

 原子力発電所で使用した核燃料からプルトニウムを取り出す「再処理」を、米国が例外的に日本に認めた日米原子力協定が16日に満期を迎える。協定は自動延長され、日本が所持する約47トンのプルトニウムと再処理の権利に国際的関心が高まる。東京電力福島第1原発事故で甚大な原子力被害を受けた東北は、青森県に核燃料サイクル施設を抱える。約8キロで核兵器1発分の材料になり得るプルトニウムと核燃料サイクルは今後どうなるのか、どうすべきなのか。3人の識者に聞いた。(聞き手は青森総局・丹野大)

◎日米原子力協定インタビュー(下)元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎さん

<海外は続々中止>
 −核燃料サイクルや核不拡散に関する問題を長く研究してきた。現在の日米原子力協定は1988年に結ばれたが、当時の状況はどうだったのか。
 「青森県と同県六ケ所村が使用済み核燃料再処理工場の受け入れを決めたのが85年。90年代前半には高速増殖原型炉もんじゅが動くという状況で、核燃料サイクルまっしぐらだった」

 −各国の核燃料サイクルへの対応は。
 「米国は経済性がないとして70年代に再処理をやめた。推進していた欧州は経済性と技術的な問題を理由に、80年代後半から高速増殖炉と再処理はやめた方がいいという雰囲気が出てきた。フランスや英国と再処理契約をしていたドイツ、オランダなどは、90年代に再処理をやめると決めた」

 −経済性はないのか。
 「2012年の原子力委員会で現実的な選択肢として、使用済み核燃料を再処理せずにそのまま処分する『直接処分』とプルサーマルのコストを比較した結果、直接処分の方が安かった」

 −再処理にはごみの減容や毒性の低減といった効果も見込まれる。
 「再処理で高レベル放射性廃棄物は減るが、低レベル放射性廃棄物が増えるので大差はない。潜在的な毒性は減っても、燃料に閉じ込められていたプルトニウムが取り出しやすくなり、危険性は増す」

 −直接処分をしない理由は。
 「技術的には可能だが、法律上、使用済み核燃料は全量再処理になっている」

<核不拡散に影響>
 −「プルトニウム削減」を盛り込んだエネルギー基本計画が閣議決定された。今後の国の動きをどう予想しているのか。
 「プルサーマルの推進に力を入れるだろう。英国にある日本のプルトニウム(16年末時点で約21トン)の所有権を英国に移す取り組みも進めると思う。再処理もスローダウンせざるを得ないだろう」
 「日本原燃に再処理事業を委託している使用済燃料再処理機構は国の認可法人だ。事業には政府の承認が必要なので、政府が一時的に再処理を止めることも可能だ。明らかにプルトニウムが増える事業計画だったら、政府も承認しづらいだろう」

 −プルトニウムはどのように減らしていくべきか。
 「プルトニウムをごみとして処分する考えを認める必要がある。余剰プルトニウムは米国もフランスも英国も悩んでいるので、国際メカニズムで減らしていけばいい。日本が再処理から撤退すれば、世界、特に北東アジアの核不拡散へ与える影響は大きい」

[核燃料サイクル]原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを、ウランとの混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用する国のエネルギー政策。当初は消費した以上のプルトニウムを増産する高速増殖炉で使う計画だったが、原型炉もんじゅは廃炉が決定。政府は後継の高速炉の開発を掲げる。現在は一般の原発(軽水炉)でMOX燃料を使うプルサーマルを進めるものの、稼働は4基にとどまる。


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2018年07月16日月曜日


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