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<芥川賞候補「美しい顔」>きょう選考会 異色の震災小説、評価は 東北も注視

 東日本大震災の被災地を舞台にした北条裕子さんの小説「美しい顔」が18日選考の第159回芥川賞の候補となり、東北でも賞の行方に関心が集まる。被災者の手記などとの類似表現が指摘された上、山梨県出身で東京都在住の北条さんが「被災地に行ったことは一度もない」と公言しているためだ。異色の震災小説はどんな評価を受けるのか。
 「美しい顔」は避難所の女子高校生が主人公の群像新人文学賞作品。一人称の語りで、母の死を受け止め再起を図る心の動きをつづる。津波や遺体安置所のリアルな描写、取材メディアへの複雑な心情も織り込んだ。芥川賞候補の発表後、既刊書との類似表現が明らかになり、北条さんは参考文献5冊を示さなかったことを謝罪した。
 仙台市の出版社、荒蝦夷(あらえみし)の土方正志代表は「想像をはるかに超えた巨大災害を取り上げるのに5冊は少ないのでは」と驚く。「現場に行かずとも小説は書けるが、もっと準備して自分なりの考えを持っていれば、類似表現にはならなかっただろう」とみる。
 仙台市で高校時代を過ごし、盛岡市に実家がある作家木村紅美さん(東京)は「震災は言葉を失わせるほどショックな出来事。現在進行形の生々しい問題で、直接の題材にすることは自分にはまだできない」と実作者としての実感を語る。
 自身は震災後、小説を書けなくなり、沿岸部のがれき撤去のボランティアに通った。「経験していないことを想像力で書くことは文学の王道。被災地と距離があるからこそ書けたのかもしれない」と話した。
 文芸評論家の小林直之さん(仙台市)は「先入観を持たずに読むことは難しいが、作品そのもので評価するのか、作者の経歴や動機も加味するのかどうかは読み手の自由。作品の価値判断は読者一人一人に委ねられている」と指摘する。


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2018年07月18日水曜日


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