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<日米原子力協定の自動延長>全量再処理見直しの時

 原子力発電所で使った核燃料からプルトニウムを取り出す「再処理」をはじめとする日本の原子力政策の限界が浮き彫りになっている。核兵器の原料をため込むことに国際社会から厳しい視線を向けられ、青森県六ケ所村の再処理工場を中核と位置付ける核燃サイクルは課題だらけで、八方ふさがりの状況にしか見えない。日米原子力協定が満期となった今、使用済み核燃料を再処理しない処分を含めた善後策を検討すべき時期を迎えている。
 14〜16日に掲載したインタビュー企画「プルトニウムの行方」で、米国の政府や議会にロビー活動するシンクタンク代表の猿田佐世氏(41)に日米原子力協定の現状などを聞いた。猿田氏によると、北朝鮮は以前から、日本のプルトニウム保有と再処理に不満を示していた。
 核不拡散を重んじる米国は北朝鮮の非核化に向けた取り組みを進める。だが、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が首脳会談した6月12日に前後して、米国が日本のプルトニウム管理や利用に注文をつけ始めた。
 政府は今月3日に閣議決定したエネルギー基本計画に「保有量の削減に取り組む」と初めて明記した。5月に公表した素案にはなかった文言だ。1月に原子力協定の自動延長が決まった際も焦点になっていなかった。米国側の懸念に配慮したとの見方が出ている。
 厳しい目で見られるのは当然だ。日本のプルトニウム保有量は計約47トン(うち核分裂性約31トン)。約8キロで核兵器1発分の材料になるといわれ、単純計算で約6000発分に及ぶ。2021年度上期に六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場が完成すれば、さらに年間最大で8トン(うち核分裂性4.8トン)を取り出す計画になっている。
 プルトニウムは当初、エネルギー資源の乏しい日本で「夢の原子炉」の燃料になると期待された。消費した以上に資源を生み出す高速増殖炉で使う計画だったからだ。しかし、高速増殖原型炉もんじゅはトラブルが相次ぎ、16年に廃炉が決定。大口の消費先を失った。
 プルトニウムの現実的な削減方法は、海外に譲渡するか、ウランを混ぜ合わせた酸化物(MOX)燃料にして一般の原発で燃やす「プルサーマル」しかない。
 だが消費できる核分裂性プルトニウムは原発1基当たり年間約0.3〜0.4トンにすぎない。発生量以上に消費するには16〜18基でプルサーマルを進めることが必要になるが、現状は4基止まりだ。
 再処理工場の稼働率を下げると、耐用年数中に使用済み核燃料を処理しきれない可能性も浮上する。さらに使用済みMOX燃料の行き場は全く決まっていない。
 こうした負の連鎖を絶ち、プルトニウムを減らすには、使用済み核燃料の全量再処理を見直すことが最も合理的だろう。再処理せずに捨てる「直接処分」という考え方だ。
 直接処分はプルサーマルよりコストが安く、使用済みMOX燃料も発生しない。核のごみの最終処分地が建設されるまで、金属製容器に入れて保管する「乾式貯蔵」で時間を稼ぐこともできる。
 日米原子力協定の満期を機に、いつでも再処理の方針を変更できる条件が整った。将来世代に負担を先送りしないためにも、決断は早い方がいい。

[日米原子力協定] 原子力の平和利用を目的とした核燃料の調達、技術の導入などに関する日米間の協定。使用済み核燃料の再処理の権利を日本に認めている現在の協定は1988年に結ばれた。今月16日に満期を迎えたが、期限の6カ月前までに日米のいずれかが終了を通告しなかったため自動的に延長された。今後は一方の通告により、6カ月後に協定を終了できる。
(青森総局・丹野大)


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2018年07月23日月曜日


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