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<白球は未来へ>鶴岡野球教室の挑戦(上)小中一貫「ドラ1」育成

高校や社会人で活躍するための基礎の習得に力を入れる鶴岡野球教室=鶴岡市の鶴岡ドリームスタジアム

 鶴岡野球連盟(鶴岡市)が運営する小中学生の民間クラブ「鶴岡野球教室」から、プロ野球ドラフトで指名される選手が相次いで育っている。かつては高校野球の甲子園大会出場もままならなかったような鶴岡の野球事情は一変。プロで活躍する選手が身近な存在になりつつある。少子化や野球人口の減少といった逆風の中、強化策を実らせてきた野球教室の挑戦を見つめた。(酒田支局・菊間深哉)

◎逸材続々

 昨年10月26日は鶴岡市の野球関係者にとって忘れられない一日になった。鶴岡東高3年(当時)の吉住晴斗投手(18)がプロ野球ドラフト会議でソフトバンクに1位指名された。山形県内の高校生で史上初めてのことだった。
 吉住投手は小中学生の頃に鶴岡野球教室に通い、基礎を学んだ。中学入学時に市外のリトルシニアに進んだが、2年ほどで復帰した。
 父親の英則さん(44)は「シニアを辞めた後、野球を諦めることを真剣に考えた。今があるのは『またやろう』と誘ってくれた教室のおかげだ」と振り返る。
 5月下旬、鶴岡市の鶴岡ドリームスタジアムにある室内練習場。市内外の11中学校から部活動終了後の午後7時に1〜3年生約60人が集まり、ウオーミングアップを始めた。
 教室は、全国にも例がない小中一貫のカリキュラムだ。スポーツ少年団や部活動で軟式球を扱う小学4年生から中学3年生までが年代別に週1、2回の2時間、主に硬式球で合同練習する。チーム名「鶴岡ドリームス」で硬式の大会に出場し、県外に遠征もする。

 教室が生まれた背景には連盟の強い危機感があった。
 設立された1990年代前半、鶴岡の野球は81年の鶴商学園高(現鶴岡東高)以来、夏の甲子園にも出場できない低迷期にあった。勝木正人副会長(68)は「関東は弱い中学にもめぼしい選手が必ずいるが、鶴岡はゼロだった。地域全体で質の高い練習を増やす必要を感じた」と振り返る。
 ソウル、バルセロナ両五輪でメダルを獲得した元日本代表内野手で社会人野球チーム「永和商事ウイング」(三重県四日市市)の西正文監督(57)に設立当初から指導法を学び、運動神経が発達する小中学生のうちに野球の基礎となる体の動かし方を身に付けることを重視する。
 鶴岡ドリームスの佐久間みぎわ代表(54)は「試合に勝つためではなく、高校や社会人でも活躍できるようけがをさせず、伸びしろを大事にする指導をしている」と強調する。

 成果が形になり始めている。プロ入りした教室出身者は吉住投手以前にも、首位打者になったソフトバンクの長谷川勇也外野手(33)や、日本ハムで抑えを担う石川直也投手(22)がいる。高校、大学の強豪チームにも出身者を次々と送り出している。
 東北楽天が編成する小学5、6年生の軟式チーム「東北楽天ジュニア」にも選ばれた山形県三川町三川中3年の斎藤堅史投手(15)は「シニアですぐに硬式球を投げ込んで肩を壊すのが心配だった。教室は個性を生かして理屈で教えてくれる。『ドラ1』の先輩も出ているのが励みになる」と話す。


2018年07月24日火曜日


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