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<再生のキックオフ>Jヴィレッジ人模様(上)選手が誇れる場所に

再開の準備が大詰めを迎えているJヴィレッジのグラウンドに立つ明石さん=福島県楢葉町

 東京電力福島第1原発事故で対応拠点となったサッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)が28日、一部再開する。「復興のシンボル」としての期待を背負う再始動。関わり、見守る3人に聞いた。(いわき支局・佐藤崇)

◎運営会社社員 明石重周さん

 運営会社Jヴィレッジの社員として大会と合宿の誘致や受け入れ準備に追われる。昨年までは中学生世代のクラブチーム、Jヴィレッジスポーツクラブ(JSC)の指導者を務めた。
 「グラウンドは一時、作業員らの車で埋め尽くされた。そこにようやく緑が戻ってきた。間もなく選手たちが駆け回る。想像するだけでわくわくします」
 JSCコーチとして声を張り上げたグラウンドは、毎年夏の全国大会の会場でもあった。「今年こそは出場を」。チームの成長に手応えを感じる中、東日本大震災と原発事故は起きた。
 「子どもたちの多くは県内外に避難した。安否確認サイトを立ち上げると『またチームでやりたい』『ボールを蹴ろう』などと書き込みが相次いだんです」

<メンバーが半減>
 高校入学を控えていた前キャプテンは行方不明。津波にのまれたと分かった。
 「絶対にチームをなくすわけにいかないと思いました。会社もチームの拠点をいわき市に移し、継続すると決断してくれました」
 部活後の高校のグラウンドを借りて練習を始めた。ただ、遠くに避難した選手も少なくなかった。
 「メンバーは約30人。震災前の半分。県外に移る子と泣きながら別れたのを覚えています」
 チーム運営も一変した。当初はいわき市の自宅が事務所代わり。監督をしつつコーチ2人の日程管理から経理まで何でもこなした。
 「JSCの存続、その先のJヴィレッジ復活が自分の使命。子どもたちのために何ができるかを第一に考えました」

<宿泊予約は好調>
 福島市出身。福島大を卒業後、2000年に運営会社に採用された。03年の発足時からJSC一筋だった。
 「原発事故後、他チームから『うちのコーチに』と誘われ、心が揺れた時も正直ある。でも、巣立った選手たちが高校で活躍する姿に勇気づけられました」
 昨年4月からはJSC担当を離れ、大会誘致などを通じて施設の再始動を支える。8月の宿泊予約は約7000人と好調な出足だ。
 一方、7年の空白は大きい。開催地が他県に移った各年代の全国大会を「戻すのはハードルが高い」。放射線への不安も根強い。
 「指導者がJヴィレッジでの合宿を検討したが、保護者全員からは賛同を得られなかった関東の学校もあります」
 再開はすぐそこ。Jヴィレッジの役割は?
 「一つは日本代表ら国内トップ級を支えること。もう一つは地域に根差し、スポーツに親しめる環境をつくること。両軸をバランス良く回す。それが一段と重要になったと思います」
 JSCの現役メンバーはまだ日本サッカーの聖地での練習経験がない。再開する28日に記念試合がある。
 「彼らが『俺たちはJヴィレッジのチーム』と誇れる場所にしていきます」

[Jヴィレッジ]1997年開設のスポーツ施設。東京電力が建設し、福島県に寄贈した。面積49ヘクタール。天然芝と人工芝のグラウンド9面、5000人収容規模のスタジアム、新設117室を含む200室の宿泊施設などを備える。うちグラウンド3面は今後復旧予定。県が整備する全天候型練習場の利用は今秋始まる。福島第1原発事故の対応拠点となり、東電が原状回復工事を進めた。2019年4月に全面再開する。


2018年07月24日火曜日


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