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<模索する史都・多賀城市長選>(下)まちづくりの鍵/空き地増 活用策検討を

市中心部にあり、5年後に移転予定の東北学院大工学部=多賀城市中央1丁目

 東日本大震災で被災した住宅地などの現地再建を進めた多賀城市は、他の自治体に比べて復興が進んでいるとされる。ハード事業の終了が見えてきたが、生活環境などを巡り一部の市民から不満の声が上がる。復興後を見据えた産業や文化の振興、少子高齢化対策など新たなまちづくりの視点も必要になっている。任期満了に伴う市長選(29日告示、8月5日投票)を前に、課題を探った。(多賀城支局・高橋秀俊)

<南門復元を計画>
 多賀城市では2024年、多賀城創建1300年を迎える。節目の年を見据え、市は国特別史跡多賀城跡の南門復元を計画している。
 市の試算では、復元にかかる費用は約15億円に上る。関連施設を含む全体の事業費は53億円。うち37億円が市の負担となる。財源確保が難問になり、市は整備時期を明示していない。
 まちづくりの方向性を巡り、市民の間には、多様な意見がある。
 特産品として古代米の生産と商品開発に取り組む加藤真祟さん(36)は「地場産業と連携した新商品に可能性を感じている。史跡が充実すれば、より多くの人が集まるようになり、商機が広がる」と期待する。
 「史跡整備に力を入れ過ぎている」。274戸ある市内最大の災害公営住宅、市営鶴ケ谷住宅自治会で副会長を務める駒林幸雄さん(81)は、こう語る。
 「災害公営住宅は高齢者が多く、福祉に力を入れてほしい。市の施策は他自治体の後追いが多く、先進事例にも取り組んでもらいたい」と駒林さんは訴える。
 多賀城市には東北学院大工学部や陸上自衛隊多賀城駐屯地があり、企業の社宅も多い。市によると、住民基本台帳に基づく人口移動率は毎年13%強で、16、17年は宮城県内自治体で最も高い。地元意識が薄く「暮らしやすさ」を求める市民が多いのは確かだ。

<人材育成が必要>
 東北学院大工学部は23年、仙台市に移転する予定。大学生や院生約2000人が市外に移る見通しで、市中心部にある約15ヘクタールの大学跡地の活用が課題になる。
 関係者によると、東日本大震災後、市内では住宅地や南部の工業地帯に、空き地が目立つようになったという。
 第5次市総合計画の審議会会長を務めた東北学院大教養学部の柳井雅也教授(経済地理学)は「税収減を懸念しているが、市の対策が見えない。大学跡地を含む空き地の活用策が必要で、新たなまちづくりにもつながる」と語る。
 都市部でも人口減の時代を迎えることを踏まえ、柳井教授は力を入れるべき施策として人材育成を挙げる。「首長の任期中に成果が出にくい取り組みだが、ソーシャルビジネスやコミュニティービジネスに関わる起業家育成をサポートしてはどうか」と提案する。


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2018年07月26日木曜日


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